すべての花へそして君へ③


 結果、土砂降りになった。


「口開けて。……もっと」

「ふぁ、んむ」

「もっと出して。もっと求めて」

「あ、んんっ」


 雨のまにまに。快楽へと誘う言葉に身を委ねる。上手く息ができなくて、それでも何とか答えたくて。そこへと辿り着きたくて。彼の全てを受け止めたくて。


「でも、オレ連絡入れたしね。悪いの完全にシズルさんじゃん?」

「はあ、はあ……っ、はあ」

「こぼれてる。舐めて」

「んんっ……」


 いつの間にか組み敷かれていたわたしは、酸欠で頭が回らないまま無意識のままに、こぼれたそれを、彼の指から舐め取っていく。


「……なんか、すげーえろいね」

「……ん?」

「ちょっと悪いことしてる気分」


 解放されたのは窒息寸前。彼の腕の力も雨の勢いもようやく緩んでくれたので、わたしが落ち着くまでの間、しばしお日様の匂いを堪能させてもらうことにした。

 だいぶ落ち着きを取り戻してきた頃。上気した頬へ、そっと手が伸びてくる。


「言えたらいいけどね」

「……え?」

「面と向かって? 言えたとしても、とても本気じゃ言えない」

「な、なんで……?」


 頬に触れていた手が、よしよしと慰めるように頭を髪を撫でていく。


「オレが、男だから」

「……そんなの」

「あと、あんたのことよくわかってるから」

「え、……んっ」


 静かに唇を塞いで、ゼロの距離で愛を囁く。


「どうしようもなく、愛しいからだよ」

「……!」


 わたしの言葉を待たず、その驚きすらも口付けと一緒に奪われる。


「言ったろ? これも見栄。格好付けたい、好きな子には特に」

「……でも」

「応援したいじゃん。好きな子がすることは。あおいだってそうでしょ?」

「……そう、だけど」

「でも他のことは言える。我が儘だって、願望だって」

「え? ……んっ」

「さっきのだって……今のだって、ちゃんとしたわがままだし。願望。……欲求」


 むにっとほっぺたを抓んでくる彼は、至極楽しそうだ。いや、嬉しそうだ。
 隣へ横になる彼の方へ、ぐるんと体を向けると、やっぱり嬉しそうに笑ってぎゅっと抱き締めてくれた。


「ていうか、やめろって言っても言うこと聞かないから、絶対言い損で終わると思うんだよね」

「い、言ってみないとわかんないよ?」

「ごめん間違えた。言い損で終わる。絶対終わる。言い切る」

「……むぅ」