慌てて手を離してみたけれど、ちょびっと赤くなってるだけで異常なし。……ふう、彼氏の御御足に穴空けるところだったぜ。
「なんであんたが動揺するの。明かダメージ多かったのオレでしょ」
「んなわけないでしょ。わたしの方がいろいろやらかしちゃってたじゃん」
「……一個訊きたいんだけど」
「訊かないで」
「よくわかんない日本語の意味ってさ」
「ああ! そろそろ肩でも揉んであげようか!」
「やっぱり夢だと思ってたの」
「はいそうですすみませんごめん」
ベッドの上で深々と主様に土下座をしてみたけれど、一向に何の反応も無し。頭上げたら、「頭が高い」とか「動いていいなんて言ってないけど」とか言われちゃうかな……。
でもやっぱり気になったから、思い切って顔を上げてみるっ。
「……」
「えっ。な、何故拗ねておる」
「拗ねてない」
「いや拗ねとるがな」
綺麗な突っ込みを入れた脚をガシッと掴んだヒナタくん。ぐるりんっと回転させ、わたしの体を俯せにさせた。
そして、完全に背後をとられてしまったあおいさん。……ピンチです!
「夢じゃないと甘えてくれないの」
「……ほ?」
あれ。どうやら背中や腰も揉んでくれるらしい。……い、いいのかな。ご主人殿にそんなことをさせて。いろいろ後で怖いんだけど。
「滅多にないから」
「そんなことは……」
「本当に無意識なんだろうけど、甘えることに抵抗があるんだと思う」
「それは、お互い様」
「そうだけど、でもオレ男だし。けど年下だし、できることオレの方が少ないし、ていうかほとんど何でもできるから羨ましいんだけど」
「そんなことないよ」
「だから、嬉しいんだよ。だから、もっと甘えて」
「……」
「もちろん甘えたい時でいい。知ってる? 甘えてこないから、みんなして本当、勝手に甘やかしてるんだよ、あおいのこと」
「……ふふ。うん、知ってる」
あの時は、それが失態だと思っていたけれど。……甘え、か。
「でも、結構ヒナタくんに甘えてると思うんだけどなわたし」
「帰っちゃやだとかね」
「――!!!!」
「もうちょっと一緒にいたいとか」
「……ひ、ひな」
「録音できなかったのが残念」
「しなくてよろしい」
「うん、また言ってくれるもんね。待ってるよ」
言わせる気満々だなこの人。
……でも、そんなに喜んでくれるなら。
「……じゃ、じゃあ一個だけ」
「ん? 何。何でも言っ」
「匂い嗅ぎたい。ヒナタくんの」
「……」



