すべての花へそして君へ③


 慌てて手を離してみたけれど、ちょびっと赤くなってるだけで異常なし。……ふう、彼氏の御御足に穴空けるところだったぜ。


「なんであんたが動揺するの。明かダメージ多かったのオレでしょ」

「んなわけないでしょ。わたしの方がいろいろやらかしちゃってたじゃん」

「……一個訊きたいんだけど」

「訊かないで」

「よくわかんない日本語の意味ってさ」

「ああ! そろそろ肩でも揉んであげようか!」

「やっぱり夢だと思ってたの」

「はいそうですすみませんごめん」


 ベッドの上で深々と主様に土下座をしてみたけれど、一向に何の反応も無し。頭上げたら、「頭が高い」とか「動いていいなんて言ってないけど」とか言われちゃうかな……。

 でもやっぱり気になったから、思い切って顔を上げてみるっ。


「……」

「えっ。な、何故拗ねておる」

「拗ねてない」

「いや拗ねとるがな」


 綺麗な突っ込みを入れた脚をガシッと掴んだヒナタくん。ぐるりんっと回転させ、わたしの体を俯せにさせた。
 そして、完全に背後をとられてしまったあおいさん。……ピンチです!


「夢じゃないと甘えてくれないの」

「……ほ?」


 あれ。どうやら背中や腰も揉んでくれるらしい。……い、いいのかな。ご主人殿にそんなことをさせて。いろいろ後で怖いんだけど。


「滅多にないから」

「そんなことは……」

「本当に無意識なんだろうけど、甘えることに抵抗があるんだと思う」

「それは、お互い様」

「そうだけど、でもオレ男だし。けど年下だし、できることオレの方が少ないし、ていうかほとんど何でもできるから羨ましいんだけど」

「そんなことないよ」

「だから、嬉しいんだよ。だから、もっと甘えて」

「……」

「もちろん甘えたい時でいい。知ってる? 甘えてこないから、みんなして本当、勝手に甘やかしてるんだよ、あおいのこと」

「……ふふ。うん、知ってる」


 あの時は、それが失態だと思っていたけれど。……甘え、か。


「でも、結構ヒナタくんに甘えてると思うんだけどなわたし」

「帰っちゃやだとかね」

「――!!!!」

「もうちょっと一緒にいたいとか」

「……ひ、ひな」

「録音できなかったのが残念」

「しなくてよろしい」

「うん、また言ってくれるもんね。待ってるよ」


 言わせる気満々だなこの人。
 ……でも、そんなに喜んでくれるなら。


「……じゃ、じゃあ一個だけ」

「ん? 何。何でも言っ」

「匂い嗅ぎたい。ヒナタくんの」

「……」