すべての花へそして君へ③


 並んでホテルまでの道を歩く。電車に乗っているときに小雨でも降ったのか。街灯が照らす石畳が、ほんの少し濡れて輝いていた。


「不安がないわけじゃない。あんな強烈なこと叫びながら仕事しに行ったくせに、メールの文章前半本気みたいだったし」

「でも、本気で葵がそんなこと思ってるわけないって、ちゃんとわかってるんだろ」

「うん。でも一人になると自信なくなる。何でも。全部」

「いいんじゃね。別に普通だろ。だから、俺とアイが言ってるだろ。自信がなくなる前に」

「ちゃんと話せって言うんでしょ、どうせ。わかってるよ」

「どの顔がわかってるって言ってんだ」


 その問にオレは、至って真面目に答えた。真顔で。


「どの顔って、自分の顔知ってる? よく似たイケメンが目の前にいるんだよ? やったね」

「話逸らすんじゃねえよ日向。俺は、別れ話させるために葵を任せたわけじゃないんだからな」

「……任された覚えないけど」

「減らず口たたくな」


 そう言うツバサからは、本気で心配させてしまっていることが嫌でも伝わってきていた。


「……大丈夫だよ」

「嘘吐け。俺は自信があるぞ。絶対大丈夫じゃねえ」

「ほんと。本当に大丈夫だから」

「……なんか、根拠があるのか」

「ない」

「ほらみろ」


 でも、本当に大丈夫なんだ。
 たまに不安になることもあるけれど、みんなが思うように、あいつが本気で別れたいと、思っているわけがない。オレだってそれは信じてる。


「だってあいつ、行くときすげー笑ってたし」

「……じゃあ、あいつの将来のことは。仕事って、やっぱりもう……」

「いや、どっちも選んでないと思うよ」

「は? でももう話を聞く限り……」

「ツバサも、オレらのこと舐めてるね」

「……なんかわかったのか」

「もちろん」