並んでホテルまでの道を歩く。電車に乗っているときに小雨でも降ったのか。街灯が照らす石畳が、ほんの少し濡れて輝いていた。
「不安がないわけじゃない。あんな強烈なこと叫びながら仕事しに行ったくせに、メールの文章前半本気みたいだったし」
「でも、本気で葵がそんなこと思ってるわけないって、ちゃんとわかってるんだろ」
「うん。でも一人になると自信なくなる。何でも。全部」
「いいんじゃね。別に普通だろ。だから、俺とアイが言ってるだろ。自信がなくなる前に」
「ちゃんと話せって言うんでしょ、どうせ。わかってるよ」
「どの顔がわかってるって言ってんだ」
その問にオレは、至って真面目に答えた。真顔で。
「どの顔って、自分の顔知ってる? よく似たイケメンが目の前にいるんだよ? やったね」
「話逸らすんじゃねえよ日向。俺は、別れ話させるために葵を任せたわけじゃないんだからな」
「……任された覚えないけど」
「減らず口たたくな」
そう言うツバサからは、本気で心配させてしまっていることが嫌でも伝わってきていた。
「……大丈夫だよ」
「嘘吐け。俺は自信があるぞ。絶対大丈夫じゃねえ」
「ほんと。本当に大丈夫だから」
「……なんか、根拠があるのか」
「ない」
「ほらみろ」
でも、本当に大丈夫なんだ。
たまに不安になることもあるけれど、みんなが思うように、あいつが本気で別れたいと、思っているわけがない。オレだってそれは信じてる。
「だってあいつ、行くときすげー笑ってたし」
「……じゃあ、あいつの将来のことは。仕事って、やっぱりもう……」
「いや、どっちも選んでないと思うよ」
「は? でももう話を聞く限り……」
「ツバサも、オレらのこと舐めてるね」
「……なんかわかったのか」
「もちろん」



