すべての花へそして君へ③


「あーでもちょっと待って」

「ん?」

「オレんち来るって言ったよね」

「う、うん」

「……ちょっと無理かも」

「あ、無理にとは」

「いや、行くなら一回父さんに会いに行かないといけないんだよ。すっかり忘れてた」

「そうなの? わたしは別にいいけど」

「いいわけないでしょ。恋人水入らずのところ、今会いにでも行ったらしばらくの間離してもらえないよ。あんたはそれでもいいの。オレは嫌だよ」

「そ、それは……確かに」


 うーんと、二人でどうしたものかと考えていると。ふと、ヒナタくんが何かに気付いたように声を上げた。


「ねえ、あんたもしかして今鍵持ってる?」

「え? 何の?」

「あれ。机の上になかった? 鍵。家の」

「ん? ちょっとよくわかんないんだけど」

「クリスマスに、置いてなかったかって」

「ああ! 持ってる持ってる! ……え。でもなんでヒナタくんが知ってるの」

「オレが置いていったからね」

「……ん? その心は?」

「それ、オレんちの合い鍵」

「……っ、えええッ!!??」