また、距離を取られてしまった。ついさっき変なこと言ったからかな。別に、思ったこと言っただけなんだけど……はっ! その思ったことがもうすでに変態発言だった!? あちゃー……こりゃわたし、ヒナタくんと離れてる間に、変態が重症化してしまったらしいぞ。
「すまんヒナタくん。変態は死なんと治らん」
「いや待って。何処をどうしたらそうなった」
一つ。大きな大きなため息を落としたヒナタくんは、コップに残っていたホットワインを、わざとらしく大きく呷った。
「えっと。一つは、離れてた期間が長かった」
「……ん?」
「んで、酒が入ってる」
「……うん」
「最後は、……今日マジで尋常じゃないほど可愛いんだよあおい自覚ないんだろうけど」
「う、……ん?!」
大変だ。またヒナタくんがご乱心だぞ。
「そのトリプルパンチにより、触れられでもしたら多分オレはノンストップでいろいろやらかす自信があります」
「お、おう。それは大変ですな」
「だから、……急に触れられたら困る。あと、煽らないでなるべく」
「わ、わかった」
お酒が入ると、少し素直になるのか。それともやっぱり緊張してるのか。
どこかいつもと違うヒナタくんに見えないところで、小さく笑っておいた。
「だったら、触れたくなったら触ってね」
「え。……ちょっと、言ってる側から」
「ごめん、結構暑くって」
理由としては、それが半分。もう半分は、わたしがヒナタくんに触れたいから。
自分だけだって、そう思ってる? わたしだって、同じだよ。だって、変態度パワーアップしたんだから。
ま、ヒナタくんがそう言うので、わたしも我慢しますけど。
「というかさっきの本気だったんだね。わたしてっきり冗談かと思ってた」
「引ん剥くってやつ? 当たり前じゃん。好きな子と一つ屋根の下、邪魔する奴は誰もいないしお酒も入ってる。終いには彼女が服脱ぎ出すとか、完璧フラグ立ってるじゃん」
「一個お願いがあるんだけど」
「いや人の話聞け」
「手。繋いで欲しい、です」
「…………」
「む……無理にとは」
「無理じゃない」
真っ直ぐな声と一緒に伸びてくる腕。真剣な表情と手の平を交互に見つめていると、「早く」と一言、彼は甘えた。
それにくすっと笑いながら指先に触れる――「わっ!」……と、もう待てないと彼はわたしの手を掴み、体を抱き込んだ。
「痩せたでしょ」
「抱き締めた開口一番、いつも太ったか痩せたかのどっちかだよね」
「無理は。してない?」
「してないよ。絶好調!」
早速有言不実行。触れてくれたヒナタくんに、わたしも思いきり抱きついた。……おめかししてきて、よかった。



