「ま、一番は断トツで告った時だけど」と、息を吐きながらもたれ掛かってくる。
(うわあ……)
彼にとっては、全く意図してはないことなんだろうけれど、その仕草が少し幼く見えて、どこか拗ねているようにも見えて……。
可愛い。ついでに、無性に恥ずかしい。アンド超絶反応に困るっ。
なんだようそれ。そんな風に言われた時の解答なんて、わたしの持ってる問題集に載ってるわけないでしょ。
今度はわたしが顔を押さえつける番だ。尋常じゃないほど顔が……あっついなあもう。
「どうかした?」
「どうもしないいいぃ」
「そう? ならいいけど……マフラーで全然顔見えないね」
「今は見ないで」
「苦しくない? 嫌だったら外していいよ」
「い、嫌なわけないよ。いい匂い嬉しい! ありがと!」
「……何がだよ。この変態」
「はっ! しまった!」
その通り過ぎて何も言えない。
がっくりと肩を落としていると、横からぶはっと噴き出す声が。頑張ってマフラーから顔を出すと、ヒナタくんは隣でお腹を抱えていた。そんなに面白かったんかい。
「ははっ、ごめんごめん」
「別に謝るほどのことではないけれど」
「緊張してることはしてるんだけど、その割には浮かれてもいるんだよねオレ」
「へ?」
浮かれている割には、あんまり顔にも態度にも全然出てないんですけど。
「浮かれてるよ。着てるもん全部引ん剥きたいくらいには」
「うわお。それは大変だ」
「だから肌見せないように気を付けてね。勿論暖かくなったら脱いでいいから」
「わ、わかった」
確と返事をするわたしに、こちらを見上げる彼はほっと安心したように優しい笑みを浮かべた。
あれ。いいように言い包められた気がする。
そんな胸中を知ってか知らずか。彼はゆっくり大きく伸びをしてから、大きく息を吐いた。
「さっきはごめん」
「ううん。わたしは別に平気」
「足が出たのは、構って欲しかったから」
「え?」
「無視されて寂しかったから」
「……ん??」
横から伸びてきた指が、クイッとマフラーに引っ掛かった。
「何考えてたの」
「え?」
「誰のこと考えてたの」
「……えっと」
「教えて」
「……強いて言うなら、井戸端会議中のおばちゃんたち?」
「ふざけてんの」
「ふ、ふざけてないよ。大マジだよ」
「嘘ばっかり」
「いやいや、ほんとだから」



