すべての花へそして君へ③


 ……何というか。こんなに嬉しくなるとは思わなかったな。


「ほら、真剣に考えて」

「わかったわかった」


 ぽんぽんと、頭に手を触れたら少し嫌な顔されたけど。


「……欲しいものって、何かな」

「さあな。けど、あいつなら何もらっても喜ぶと思うぞ」

「だって、どうせなら欲しいものあげたいじゃん」

「はちみつレモンは、そりゃもう喜んでたぞ」



『……顔色最悪。無理すんなよ頼むからさ……』

『……? 日向、何か言ったか』

『……! あっ、……いや。何でもない』



「顔がもうニヤニヤしてた」

「……何勝手に」

「作ってやったのか? 九条家直伝」

「……前に、ちょっと」


 少し睨んでくるのは照れ隠しだろう。
 可愛い反応にもう一度頭を撫でても、手が払われることも文句を言われることもなかった。


「安心しろ。伝言は伝えてねえよ」

「そもそも伝言なんて頼んでないけど」

「もう、会いに行けるんだな」

「待ってても埒明かないからね」

「お前の中で整理できたなら大丈夫だろ」

「ツバサ」

「ん? どした」

「……えっと」


 それから小さく、「ありがとね」そうこぼした可愛い弟のために、俺は彼を送り出すまでの間、苦手な謎解きに付き合ってやったのだった。