……何というか。こんなに嬉しくなるとは思わなかったな。
「ほら、真剣に考えて」
「わかったわかった」
ぽんぽんと、頭に手を触れたら少し嫌な顔されたけど。
「……欲しいものって、何かな」
「さあな。けど、あいつなら何もらっても喜ぶと思うぞ」
「だって、どうせなら欲しいものあげたいじゃん」
「はちみつレモンは、そりゃもう喜んでたぞ」
『……顔色最悪。無理すんなよ頼むからさ……』
『……? 日向、何か言ったか』
『……! あっ、……いや。何でもない』
「顔がもうニヤニヤしてた」
「……何勝手に」
「作ってやったのか? 九条家直伝」
「……前に、ちょっと」
少し睨んでくるのは照れ隠しだろう。
可愛い反応にもう一度頭を撫でても、手が払われることも文句を言われることもなかった。
「安心しろ。伝言は伝えてねえよ」
「そもそも伝言なんて頼んでないけど」
「もう、会いに行けるんだな」
「待ってても埒明かないからね」
「お前の中で整理できたなら大丈夫だろ」
「ツバサ」
「ん? どした」
「……えっと」
それから小さく、「ありがとね」そうこぼした可愛い弟のために、俺は彼を送り出すまでの間、苦手な謎解きに付き合ってやったのだった。



