すべての花へそして君へ③


「……誰が馬鹿野郎だって?」

(たく、どれだけ似た者同士なんだーこいつら)

「ちょっと! 無視しないでよ!」

「こっちは傷心してんだ! 癒やしてる間くらい待ってろ!」


 逆切れ状態の俺に、日向は目を丸くする。ここまで声を荒げる俺を、見たことないんだろう。そもそも見せたことねえよ。
 日向はきょとんとしながら首を傾げていた。


「えっと、なんかごめん?」

「いや。当たって悪かった」

「いいよ。お互い様だし」


 それで、さっきのオレの質問の答えは? その質問に、今度は俺が首を傾げた。


「は? お前だろ馬鹿野郎」

「違う。何であいつのカード持ってるの」

「そりゃお前、いろいろ都合があるんだよ俺にも」

「いろいろって何」

「……クリスマスプレゼント?」

「もうちょっとで年越すんだけど」


 問い質したところで、答えるつもりは毛頭ないとわかったのか。「今回のことといいこの間のことといい、なんでツバサばっかり」と、日向は大きな大きなため息を落としていた。

 俯いて座る弟の顔を、覗き込むように体を屈める。


「いらないなら、俺が貰っちまうぞ?」

「……いるに決まってるでしょ」


 むくれた彼は、引ったくるように俺の手からカードを奪っていった。
 口元が少し緩んでいるので、どうやら気に入ってくれてはいたらしい。素直なんだか、そうじゃないんだか。

 でもこの顔が見られるんなら、今回も、それからこの間も、頑張った甲斐があるというものだ。今度藍に、お礼と謝罪と、それから上手くいったことを報告してやらないと。


「謎解き頑張れよ」

「うん。てか、さっきの質問なんだったの」

「強いて言うなら、あいつがお前にべた惚れしてる証拠?」

「は? べ、べた惚……え?」

「てかお前ブラコンだったんだな」

「何それ」

「葵が言ってた。そうかそうか、お前がなあ」

「反応がおっさんなんだけど」

「それで? ほんとのところどうなんだよ」

「ささ、兄ちゃん。一緒に謎解きでもしようじゃないか」

「それ流せてねえぞ。イエスって普通に言ってるじゃねえの」

「ツバサだってオレのこと嫌いじゃないじゃん」

「……兄ちゃん、結構本気で嬉しいんだけど」

「泣かないでよ。ウザいから」



『――あと、弟も十分ブラコンさんだよ。喜びたまえ、お兄様』

『……気になる? 気になっちゃう?? なら本人に訊いてみなよー!』

『大丈夫大丈夫。多分はぐらかさないから』

『根拠? ……ふっふっふ。自信を持って言おう! わたしの勘さ!』