「……誰が馬鹿野郎だって?」
(たく、どれだけ似た者同士なんだーこいつら)
「ちょっと! 無視しないでよ!」
「こっちは傷心してんだ! 癒やしてる間くらい待ってろ!」
逆切れ状態の俺に、日向は目を丸くする。ここまで声を荒げる俺を、見たことないんだろう。そもそも見せたことねえよ。
日向はきょとんとしながら首を傾げていた。
「えっと、なんかごめん?」
「いや。当たって悪かった」
「いいよ。お互い様だし」
それで、さっきのオレの質問の答えは? その質問に、今度は俺が首を傾げた。
「は? お前だろ馬鹿野郎」
「違う。何であいつのカード持ってるの」
「そりゃお前、いろいろ都合があるんだよ俺にも」
「いろいろって何」
「……クリスマスプレゼント?」
「もうちょっとで年越すんだけど」
問い質したところで、答えるつもりは毛頭ないとわかったのか。「今回のことといいこの間のことといい、なんでツバサばっかり」と、日向は大きな大きなため息を落としていた。
俯いて座る弟の顔を、覗き込むように体を屈める。
「いらないなら、俺が貰っちまうぞ?」
「……いるに決まってるでしょ」
むくれた彼は、引ったくるように俺の手からカードを奪っていった。
口元が少し緩んでいるので、どうやら気に入ってくれてはいたらしい。素直なんだか、そうじゃないんだか。
でもこの顔が見られるんなら、今回も、それからこの間も、頑張った甲斐があるというものだ。今度藍に、お礼と謝罪と、それから上手くいったことを報告してやらないと。
「謎解き頑張れよ」
「うん。てか、さっきの質問なんだったの」
「強いて言うなら、あいつがお前にべた惚れしてる証拠?」
「は? べ、べた惚……え?」
「てかお前ブラコンだったんだな」
「何それ」
「葵が言ってた。そうかそうか、お前がなあ」
「反応がおっさんなんだけど」
「それで? ほんとのところどうなんだよ」
「ささ、兄ちゃん。一緒に謎解きでもしようじゃないか」
「それ流せてねえぞ。イエスって普通に言ってるじゃねえの」
「ツバサだってオレのこと嫌いじゃないじゃん」
「……兄ちゃん、結構本気で嬉しいんだけど」
「泣かないでよ。ウザいから」
『――あと、弟も十分ブラコンさんだよ。喜びたまえ、お兄様』
『……気になる? 気になっちゃう?? なら本人に訊いてみなよー!』
『大丈夫大丈夫。多分はぐらかさないから』
『根拠? ……ふっふっふ。自信を持って言おう! わたしの勘さ!』



