すべての花へそして君へ③


「正直か」そう突っ込めば、「ふはっ」と思い切り噴き出していた。
 自分の言葉が可笑しかったのか。それとも突っ込みが笑えたのか。弟は、「いやいや、ごめんごめん」と笑いながら肩をバシバシ叩いてくる。


「ごめん。父さんの方頼むね」

「端からお前は頭数に入れてない」

「えー。酷ーい」

「って、父さんが言ってた」

「え。マジで酷くない?」

「ついでに俺もほとんど入れられてなかったらしい」


 それは予想してはいなかったのか。目を丸くした弟は、怪訝な顔して首を傾げた。


「何しに来たの、オレら」

「今日はあくまで桜の生徒。俺らは九条の名前で招待されたわけじゃないから好きにしろ、だってさ」

「好きに、ね」

「その辺の加減は、信頼されているらしい」


「みたいだね」と、彼はやれやれ肩を竦めた。どうやら、その辺の自覚はちゃんとあったらしい。


 ――――――…………
 ――――……


「――は? ……それだけ?」

『お願いしている立場上、難しいことは言わないよ』

「……それだけで、何がどうなるのか、さっぱりわかんないんですけど」

『大丈夫大丈夫、絶対巧くいくから。ただし――……』



「ほらよ」

「どもども」

「でもこのカード、お前のじゃねえんだよ」

「……は?」

「それでもいいよな?」

「いや、ダメに決まってるでしょ」


【二人にゲームのカードを渡すこと】
 ただし渡す時は、絶対“あの言葉”を忘れずに。


 ゲームの賞品は、その人が一番欲しいもの。これ幸いと、ルールをきちんと聞いていたのだろう。


「じゃあオレのは」

「いらないって捨てたのはお前じゃねえの」

「違うよ。持っててって言ったんだよ」

「そん時はゴミだと思ってたろ」

「じゃあどうしてくれんの。オレの隠しカメラと盗聴器と追跡装置」

「おい、誰に仕掛ける気だよ誰に」


 冗談なのか、まさか本気なのか。他人のカードでゲームに参加してどうするんだと、苛立たしげに睨まれる。


「……はあ。もういいよ、そのカードで。あの空間にいるよりよっぽどましだし」


 けれどすぐに視線を外し、彼は大きなため息をついた。
 子供なのか。大人なのか。普段大人びている分、もっと感情を表に出して欲しいと思うし、甘えて欲しいとも思う。兄心は複雑だった。
 小さく自嘲していたけれど、これから起こるであろう反応を想像してしまい、思わず笑いが洩れそうになる。それを必死に隠しながら、もう一度カードを目の前に差し出した。


「実はこれ、葵のカードなんだよな」