「正直か」そう突っ込めば、「ふはっ」と思い切り噴き出していた。
自分の言葉が可笑しかったのか。それとも突っ込みが笑えたのか。弟は、「いやいや、ごめんごめん」と笑いながら肩をバシバシ叩いてくる。
「ごめん。父さんの方頼むね」
「端からお前は頭数に入れてない」
「えー。酷ーい」
「って、父さんが言ってた」
「え。マジで酷くない?」
「ついでに俺もほとんど入れられてなかったらしい」
それは予想してはいなかったのか。目を丸くした弟は、怪訝な顔して首を傾げた。
「何しに来たの、オレら」
「今日はあくまで桜の生徒。俺らは九条の名前で招待されたわけじゃないから好きにしろ、だってさ」
「好きに、ね」
「その辺の加減は、信頼されているらしい」
「みたいだね」と、彼はやれやれ肩を竦めた。どうやら、その辺の自覚はちゃんとあったらしい。
――――――…………
――――……
「――は? ……それだけ?」
『お願いしている立場上、難しいことは言わないよ』
「……それだけで、何がどうなるのか、さっぱりわかんないんですけど」
『大丈夫大丈夫、絶対巧くいくから。ただし――……』
「ほらよ」
「どもども」
「でもこのカード、お前のじゃねえんだよ」
「……は?」
「それでもいいよな?」
「いや、ダメに決まってるでしょ」
【二人にゲームのカードを渡すこと】
ただし渡す時は、絶対“あの言葉”を忘れずに。
ゲームの賞品は、その人が一番欲しいもの。これ幸いと、ルールをきちんと聞いていたのだろう。
「じゃあオレのは」
「いらないって捨てたのはお前じゃねえの」
「違うよ。持っててって言ったんだよ」
「そん時はゴミだと思ってたろ」
「じゃあどうしてくれんの。オレの隠しカメラと盗聴器と追跡装置」
「おい、誰に仕掛ける気だよ誰に」
冗談なのか、まさか本気なのか。他人のカードでゲームに参加してどうするんだと、苛立たしげに睨まれる。
「……はあ。もういいよ、そのカードで。あの空間にいるよりよっぽどましだし」
けれどすぐに視線を外し、彼は大きなため息をついた。
子供なのか。大人なのか。普段大人びている分、もっと感情を表に出して欲しいと思うし、甘えて欲しいとも思う。兄心は複雑だった。
小さく自嘲していたけれど、これから起こるであろう反応を想像してしまい、思わず笑いが洩れそうになる。それを必死に隠しながら、もう一度カードを目の前に差し出した。
「実はこれ、葵のカードなんだよな」



