ずべーんッ! と、ついこけながら身を挺して突っ込みを入れると、黒いコートを着た彼は、少しだけ目を瞠った。
……しまった。こんな登場をするつもりではなかったのに。もうちょっとスマートに出てくる予定だったのにっ。
久し振りの再会がまさか、すっとぼけたことになるなんて。用意していたサプライズ大作戦が台無しだ。
そんな胸中は顔から前面に出ていたのか。未だずっこけたままのわたしの側にしゃがみ込んだ彼は、頬杖を突きながら少々呆れたご様子だった。
「らしいっちゃらしいけどね」
「わたしもそう思います……」
「こんなところで寝てて寒くないの? いいねバカは」
「ちょっと落ち込んでおります。しばらくほっといてください」
「この間、バカでも風邪引くってわかったろ」
「ギクッ」
鋭くなった口調に、思わず体が跳ねる。ゆっくり、ゆっくり様子を窺いながら、目線を徐々に上げていった。
「ほら」
はじめに見えたのは、大きな手の平。次に見えたのは真っ白な息と、寒さで少し赤くなった鼻先。
隠しきれていない嬉しさの溢れる笑顔に、気付けば体が、勝手に差し出された手を取っていた。
「……あ、あのね」
まず、何を言えばいいだろうか。何から話すべきだろうか。いろいろ考えていたことは、ずっこけた時に一緒に頭からごっそり落ちた。
「い、いろいろ登場シーンを考えてたんだよ? ほら、せっかくこうして再会できたんだもん。あっと驚くような面白いことしようと思うじゃない」
彼の冷たい手に触れて体を起こすまでの間、ああでもないこうでもないと、あれこれ考えてみたけれど。
開口一番、激突の勢いで、強く抱きしめられた。
「わっ! ……ひっ、ヒナタ、くん?」
少し身動ぎをすると、嫌がっていると思ったのか彼は抱きしめる力を一層強くする。
ぴったりと触れ合ったところが温かい。寧ろ熱いくらいだ。
(……うん。きっと、これが正解だ)
余計な言葉はいらないことも。面白可笑しいサプライズだっていらないことも。
……そして、なぞなぞの答えとその豪華賞品も。
背中に腕を回して応えると、彼もまた、ぎゅうっと抱き締めながら頬を擦り寄せて応えてくれた。
「はあ。もう、どんだけ待たせんの。すっげえ寒いんだけど」
「あはは。ごめんね?」
「許さない。あっためて今すぐ」
「え? ……ははっ。はい! お任せあれ」
らしさに気付けば、満面の笑顔が溢れていた。



