冷えたぶう子の体をぎゅっと抱きしめると、体の中から微かに、本当に微かにカランと小さな音がしたような気がした。
「(……またいつか、その時が来たら)」
「有栖川理事長……?」
「大事にしてあげてください。あ、因みにその子は、100円玉で20万円分貯まりますから」
「おお、じゃあ頑張って貯金しなきゃですね!」
彼が、わたしが気付いたことを知っているかはわからない。もしかしたら彼自身、この中身については知らないのかもしれないし。
「20万円か~。理事長だったら何に使います?」
「骨董品ですかね。それか民族衣装を少々」
「言うと思いました。わたしは……そうだな」
「今お召しになっているような、綺麗なドレスなんていうのはどうでしょう」
「ふむ。では、それも一応候補に」
「何か決まっている顔ですね、それは」
いつの日かこれを使う時の、お楽しみに。だから今は、気付かなかった振りをしておこう。
「実はですね、ごにょごにょごにょ……」
「おお。それはそれは素敵な使い道ですね」
未来に楽しみをとっておくのも、きっと悪くないだろうから。
その後理事長と楽しく歓談をしていたわたしは、肝心なことに気が付いてしまった。すっかり、ゲームのことをほったらかしていたのだ。
「ということは、賞品は別にあるってことですか?」
「はい。今のはあくまでも参加賞ですから。しかし、まさか本当に、参加してくださってる方がいるなんて……」
ぶう子に続き、またガラクタと言われてもおかしくないものを戴きそうな雰囲気になってしまったので、少し大きめに咳払いしておいた。
「あの、今まで賞品を準備してなかったことは……」
「本音を言うと、今までの催し物においてそんなこともなかったわけではありませんね」
「……確率で言うと?」
「まあ九割程度」
どっちがか、というのは聞かないでおこう。
「けれど、今回の賞品は特別なものを用意してあります」
「特別。じゃあ噂は本当だったんですね」
「はい。恐らく一度しかアナウンスしていませんから、聞き逃してしまった方も多くいるのでしょう」
(それだけいつも参加率が低いのね)
「カードの持ち主が、きっと今一番希望しているものを」
「え? そんなものが、わかるんですか?」
「ご招待の皆様の、最低限の情報は調べておくタチでして」
「成る程成る程」
どうやってそんなことまで調べたのか、考えるとちょっと恐ろしいので遙か遠いところに置いておこう。
……問題は、別のところにある。
「た、大変です。このカードわたしのじゃなくて」
「そうですか。ご希望とあらば、今すぐ朝日向さんのカードを手配させますが」
「あっ。……えっと」
「ん?」
「……だ。大丈夫かも、しれないです」
「では、その賞品を早く見つけてあげてくださいね」
「は、はい」
「きっと、その方もお喜びになるでしょうから」
“口実ができるかもしれない”
どうやら、心の中を読まれてしまったようだ。反省。



