そうしてアカネくんも、先に出ていったオウリくんを追いかけていったけど……あれ、そのままにしてよかったのかな。なんだかんだ、ちょっと微笑ましかったけど。
「大丈夫ですよ」
「え?」
「何故ならここは、百合ヶ丘ですから」
「……ふふ。そうですね」
彼の、若干オウリくんに対して甘いところも、ちょっと毒吐いちゃうところも、少し新鮮だ。素敵な関係、築けてるみたいでよかった。
「実は、数が少なかったので出し惜しみしていたお菓子があるんですよ」
そう言って彼は頭上に花を飛ばしながら、若干スキップのような足取りで再び奥の方へと姿を消した。奥の方、気にはなるけど、見に行くのにはちょっとばかし勇気がいるな。
「んじゃ、オレも退散すっかな」
「え。なんで?」
「おいおい。話ができねえからって、ぐずぐずしてたのは何処のどいつだよ」
「ありゃりゃ。バレバレだったか」
どうやらチカくん、痺れを切らして助け船を出してくれたらしい。まったく、よく見てるんだから。
「じゃあな」
「待つんだチカくん」
「な、何だよ。……っ、そんな近くに寄んな」
「君、今来た道を帰るのかい?」
「は? それ以外に何処通って帰れって」
「あそこを、通るのかい」
「…………」
「通れるのかい」
「成る程。お前がオレのことをバカにしてるのだけはよーくわかった」
「ありゃま、帰れるのかい」
「もうちょっといてやる」
「あはっ。素直じゃないんだから」
でも、まだいて欲しかったのも本当だ。実は、ちょっとばかし緊張しているのである。
「お前でも緊張すんのか。それに驚きだわ」
「当たり前でしょう。何か粗相でもしたらって思うと」
「お前よりよっぽどあいつらの方が粗相しまくりだろ」
「あの二人は可愛いからいいんだよう」
「は? いや、それを言うならおま、……」
「……小間?」
ごほんとわざとらしく咳払いをした彼は、わたしの視線から逃げるように顔を背けた。
けれど、次に届いたのは優しい声だった。
「お前は、お前でいいんだよ。ありのままで」
「それ、お父さんも言ってたんだけど……」
正直に言おう。ありのままをぶちまけたら、きっとみんなわたしから離れていくよ? いろーんな面でわたし、比べ物にならないくらい自他共に認める変人だからね。よっぽどマニアックな人くらいだよ、いてくれるの。
「そういうところは出しちゃ不味いだろ」
「でも、ありのままでいいって言ったじゃん」
「お前……マジでわかんねえの」
「え? 何が、っ痛い……」
ビシッと見事にデコピンを食らう。
いきなり何をするんだと、文句が言えなかったのは、帰ってきた彼の視線があまりにも真っ直ぐだったから。さっきわたしから逃げたのがまるで嘘のようだ。
「今まで、いろいろ隠してきたんじゃねえの」
「言いたいことはわかってるよ。でも、ありのままがダメな場面だってある」
「そうだな。でもお前だって、ありのままでいたいって思ってんだろ」
「それはね。そうしたいって思ってるし、そうした方がいいとも思ってる。わたしはわたしだし、何処にいても変わりたくない」
「なあアオイ」
「ん?」
「オレの親父の会社が潰れた原因は」
「……っ、え」



