「タカトと何話してたの?」
「ん? 何って?」
「さっき言ってたヤツって?」
「ああ、桜の木のことか。アキにも話したみてえだけど……」
珍しい組み合わせだなと思っていたのは、そのことについてちょうど話をしていたからだそうだ。
理事長や教師の間だけ終わらせるのではなく、生徒同士の間でもその話題を繋げていくことで交流を深めていきたいとか何とか。
『ああ、よくわかったね。少し前だよ。先生たちの支持も厚いから、多分決まりだと思う』
――彼にも勿論伝えるよ。こういう話は、早くに知っておくに越したことはないからね。
仕事中、直接彼と連絡を取ることはなかったが。理事長を中継していたとしても、彼の雰囲気が変わったと。僅かながら感じることは何度もあった。
「何か、心境の変化でもありましたか?」
「お前ら、そういうところはつくづく似ててなんか腹立つわ」
「え。なんで」
「その話はもう済んだんだよ。知りたいならヒナタに聞け」
考えることは、気付くことは一緒かと。
「そうだね。そうすることにするよ」
笑ってそう返せるくらいには、もう自分の中で彼のことは落ち着いていた。名前が出ただけで前まで苦しかったのが、嘘みたいに喜びや愛おしさに変わるんだから。
「お前……」
「ねえチカくん」
「は? 何だよ」
「またチカくんの点てたお抹茶が飲みたいって、言ったら困らせるかな」
彼は一度眉を顰め、その真意を窺うようにじっと此方を見つめてくる。
無理なら、無理で仕方がない。そこは素直に諦めるよ。彼の思いを、出来るだけ尊重したいし、応援もしたいから。
小さく、呟きが落ちる。
「……お前は」
「え?」
「お前は、もう大丈夫なのかよ」
「わたし? うん。みんながいてくれたおかげで、ひとまずは」
「…………」
「チカくん?」
押し黙ったかと思ったら、今度は何かを探るような目が向けられる。
そして一度、何かを言いかけて、口を閉じて。口の形を変えてから、彼は静かに胸の内を告げた。
「聞き飽きただろうけど、オレはお前に助けられた」
「それはわたしも同じ」
「だから、何か手が欲しい時はいつでも言え」
「え?」



