けれど、笑顔で笑う彼のスーツの黒が、何故かその時のわたしには、やけに重たく見えた。
「お下げ致しましょうか」
「え? あ。大丈夫です。このまま美味しくいただきます」
「左様でしたか、失礼致しました」そう言って下がる給仕さんにわたしも頭を下げて、一先ず会場の中を見渡した。
先程のゲーム開始の合図から特に変わった様子はない。誰一人本当に興味がないのか。相変わらず会場内は、有り触れた会話で充満していた。
「んじゃいっちょ、頑張ってみますか」
「微力ながらお手伝いするよ」
「ふふ。当てにしてる」
参加者が少ないと折角計画してくれた人たちが残念がっちゃうし。ツバサくんにも言われてしまったし。ここは一つ、ゲームに挑戦といこうじゃないか。
「「……えーっと、なになに……?」」
ぐびぐびとはちみつレモンを飲み干し、貰ったカードに書かれた文字を、わたしたちはゆっくりと音読した。
「「……【雪が解けたら何になる?】……?」」



