「こほん。では気を取り直して」
問題は、入場する時に渡したカードに書いてあるって、アナウンスの人が言ってたけど……わたし、貰ってないよ? そんなカード。
「あいつが断ったんじゃねえか」
「タカトが? なんで断るの」
「百合の奴ら、ゲームには全く興味なさそうだったから」
「え。そうなの?」
「うん。俺、カードを貰うことすら断ってた人たち結構見たよ」
「ありゃりゃ……」
でも、それは一理ある。招待されている顔触れを見る限り、百合にとって今夜のパーティーは、創立記念日以上のものを感じるから。
「ほい。やるよ」
「え? でもツバサくんのが」
「俺も正直興味ないけど、でもこれは、その俺以上に興味ない奴にさっさと捨てられたかわいそうなカード」
「え」
「と言うことで、彼女ならそれくらい責任持てよ」と、彼は問答無用でわたしにカードを押しつけてきた。
「……それは、お兄ちゃんにこそ責任があるのではなかろうか」
「お前の聞きたかったこと。俺がズバリ答えてやろう」
「ん??」
「俺は今から、人に酔ったその弟を探し出して、父さんと一緒に挨拶回りへ行くという使命がある」
「……ヒナくんまさか」
「ああ。飽きて疲れて酔って逃げた」
寧ろ日向見つけたら俺が連絡欲しいくらいだ。
そう言う彼はどこか疲れているご様子。でも、そのヒナタくんのらしさには、噴き出して笑ってしまった。
「なんならお前も一緒に来るか? ついでに、彼女ですって話も済ませられるぞ」
「行きません。ゲームしてきます」
「そう言うと思った」
――健闘を祈ってるよ。
コツンとノックするように頭を叩いた彼は、優しい笑みを浮かべながら少し肩を上げ、会場の中へと戻っていった。
冷えてきたから、わたしもひとまず部屋に入ろうかな。
「じゃあ俺は、アオイちゃんのお供でもしましょうかね」
「あれ、カナデくん。動いて大丈夫なの?」
「寧ろなんで大丈夫じゃないの?」
「誰かに狙われてるのかと」
「え? 何を?」
「……命?」
「んな馬鹿な。まだ人に恨まれるようなこと、した覚えはないよ」
「あはは! だよねー」



