すべての花へそして君へ③


「こほん。では気を取り直して」


 問題は、入場する時に渡したカードに書いてあるって、アナウンスの人が言ってたけど……わたし、貰ってないよ? そんなカード。


「あいつが断ったんじゃねえか」

「タカトが? なんで断るの」

「百合の奴ら、ゲームには全く興味なさそうだったから」

「え。そうなの?」

「うん。俺、カードを貰うことすら断ってた人たち結構見たよ」

「ありゃりゃ……」


 でも、それは一理ある。招待されている顔触れを見る限り、百合にとって今夜のパーティーは、創立記念日以上のものを感じるから。


「ほい。やるよ」

「え? でもツバサくんのが」

「俺も正直興味ないけど、でもこれは、その俺以上に興味ない奴にさっさと捨てられたかわいそうなカード」

「え」


「と言うことで、彼女ならそれくらい責任持てよ」と、彼は問答無用でわたしにカードを押しつけてきた。


「……それは、お兄ちゃんにこそ責任があるのではなかろうか」

「お前の聞きたかったこと。俺がズバリ答えてやろう」

「ん??」

「俺は今から、人に酔ったその弟を探し出して、父さんと一緒に挨拶回りへ行くという使命がある」

「……ヒナくんまさか」

「ああ。飽きて疲れて酔って逃げた」


 寧ろ日向見つけたら俺が連絡欲しいくらいだ。
 そう言う彼はどこか疲れているご様子。でも、そのヒナタくんのらしさには、噴き出して笑ってしまった。


「なんならお前も一緒に来るか? ついでに、彼女ですって話も済ませられるぞ」

「行きません。ゲームしてきます」

「そう言うと思った」


 ――健闘を祈ってるよ。

 コツンとノックするように頭を叩いた彼は、優しい笑みを浮かべながら少し肩を上げ、会場の中へと戻っていった。
 冷えてきたから、わたしもひとまず部屋に入ろうかな。


「じゃあ俺は、アオイちゃんのお供でもしましょうかね」

「あれ、カナデくん。動いて大丈夫なの?」

「寧ろなんで大丈夫じゃないの?」

「誰かに狙われてるのかと」

「え? 何を?」

「……命?」

「んな馬鹿な。まだ人に恨まれるようなこと、した覚えはないよ」

「あはは! だよねー」