すべての花へそして君へ③


 一回りも二回りも大きく成長した……少し大人になった、腹立つくらい爽やかに嬉しそうに笑う彼の背中を、何度だって押してやろう。


『かっこよくくなったね、日向くん』

『……あんたに言われても嬉しくないですけど。それに、あんたの変な助言のせいで、オレは結構振り回されたんですからね』

『あ、恩人にそんなこと言うんだー。間違ったこと言ってないのにー』

『えーっと、メイドの写真は……』

『ち、ちょっと、それだけはやめて』

『嫌なら重々気を付けてくださいね。これからも』


 こういうところは、本っ当に可愛くないっ。


 ――――――…………
 ――――……


 ぷに。

 気付けばアキが、俺のほっぺたを突いていた。あら可愛い。


(日向くんも、これくらい可愛げがあれば、俺もいろいろ施しようがあるというのに)

「また笑ってた」

「……笑ってない」

「鏡見てくる?」

「見ない」

「わかってるならいい」

「…………」


 つん。つんつんと突いてくる弟は、鏡を映したように珍しく嬉しそうに笑っていた。
 自覚はあるが、無意識に頬が緩むんだ。寧ろ助けてくれ。


(あれ。そういえばアキ、最近食べてるの見かけない……)

「あいつら、大丈夫なんだな」

「……どの辺まで知ってるの」

「どの辺までも知らない。ただ俺は、ずっと悩んでいた二人の兄を見ていたから」

「……そっか」


 多分彼は、俺よりももっと苦労してそう。何となくだけど、そんな気がする。
 すっと背筋を伸ばし、足と腕を組んでふと、窓の外を見上げた。澄んだ夜空に、眩しいくらいの月が輝いていた。


「……俺も、逃げてばかりはもうやめるかな」


 もう悩み事がなくなってしまったのなら。あとは、彼女の……彼らの幸せを祈るだけなら。
 俺も、本腰入れるか。どうやら弟は、俺より先に、いろいろ考えてるみたいだから。


「手伝うよ、兄さん」

「アキ……。でも、こればっかりは」

「俺が、ちゃんと見繕ってあげる」

「お、おい」

「こう見えて俺、人を見る目は十分にあるから」

「……ばーか。俺だってあるわ」


 日向くんばかりを責めてはいられない。
 今度は俺が、俺自身を、そして家族を。……幸せにしてやるんだから。