一回りも二回りも大きく成長した……少し大人になった、腹立つくらい爽やかに嬉しそうに笑う彼の背中を、何度だって押してやろう。
『かっこよくくなったね、日向くん』
『……あんたに言われても嬉しくないですけど。それに、あんたの変な助言のせいで、オレは結構振り回されたんですからね』
『あ、恩人にそんなこと言うんだー。間違ったこと言ってないのにー』
『えーっと、メイドの写真は……』
『ち、ちょっと、それだけはやめて』
『嫌なら重々気を付けてくださいね。これからも』
こういうところは、本っ当に可愛くないっ。
――――――…………
――――……
ぷに。
気付けばアキが、俺のほっぺたを突いていた。あら可愛い。
(日向くんも、これくらい可愛げがあれば、俺もいろいろ施しようがあるというのに)
「また笑ってた」
「……笑ってない」
「鏡見てくる?」
「見ない」
「わかってるならいい」
「…………」
つん。つんつんと突いてくる弟は、鏡を映したように珍しく嬉しそうに笑っていた。
自覚はあるが、無意識に頬が緩むんだ。寧ろ助けてくれ。
(あれ。そういえばアキ、最近食べてるの見かけない……)
「あいつら、大丈夫なんだな」
「……どの辺まで知ってるの」
「どの辺までも知らない。ただ俺は、ずっと悩んでいた二人の兄を見ていたから」
「……そっか」
多分彼は、俺よりももっと苦労してそう。何となくだけど、そんな気がする。
すっと背筋を伸ばし、足と腕を組んでふと、窓の外を見上げた。澄んだ夜空に、眩しいくらいの月が輝いていた。
「……俺も、逃げてばかりはもうやめるかな」
もう悩み事がなくなってしまったのなら。あとは、彼女の……彼らの幸せを祈るだけなら。
俺も、本腰入れるか。どうやら弟は、俺より先に、いろいろ考えてるみたいだから。
「手伝うよ、兄さん」
「アキ……。でも、こればっかりは」
「俺が、ちゃんと見繕ってあげる」
「お、おい」
「こう見えて俺、人を見る目は十分にあるから」
「……ばーか。俺だってあるわ」
日向くんばかりを責めてはいられない。
今度は俺が、俺自身を、そして家族を。……幸せにしてやるんだから。



