すべての花へそして君へ③

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 さっきのは本当に反則だ。まさか、本当に泣かされるとは思わなかった。


『おかえりなさい』


 あの子のその言葉に、どんな意味が詰まっているのか。俺が、わからないはずないだろう。つうかあ、なんだからさ。


「あー……。すき」

「はいはい」


 だいぶ崩壊していた人格は、個室に案内されてから修復に向かっていた。


「ほらね。やっぱりね。アキも見たでしょ聞いたでしょ。日向くんよりも絶対俺の方が好かれてるから。愛されてるから。相思相愛だから。今日お持ち帰り確定だから。お持ち帰りされてくるから」


 完治への道程はまだまだ長いけど。


「そういえばさシン兄」


 愛しい弟は、そんな俺に突っ込みを入れるのも付き合うのも飽きたらしいけどっ。


「なんだよお……」

「さっき、何話してたんだ?」

「……別に何も」

「ちょっと嬉しそうな顔してた」

「してない」

「ならそういうことにしておく」


 ――――――…………
 ――――……


(……ん? 今考えれば別行動しなくてもよかったんじゃ……)

『シントさん、そんな大した話しないので』

『ああ、はいはい』


 やっぱりね。ということは大体俺が考えてることで当たってるか。彼のことわかったって嬉しくも何ともないんだけど。


『それで? 簡潔にどーぞ』

『はい。……その節はありがとうございました』


 クリスマスの話ね。


『おかげで、気持ちに整理ができました』

『いーえ。行きたくなかったのは本当だから』


 寝言で泣きながら君の名前を呼んでる姿なんて、見たくなかったし。


『で? 何話したの』

『あー……いや、特には』

『話したんだよね? まさか寝顔見て帰っただけじゃないんでしょ?』

『あ、はい。話はしましたけど……オレは』


 ……オレは?
 どういうことかと簡単に説明させてるうちに、俺は軽く頭を抱えた。何をやってるんだ君たちは。


(まーでも、よっぽどのことがない限り葵のことだ、ちゃんと記憶はあるだろうから……)

『でも、だから多分、あいつの本音が聞けました』

『……そうだね』


 敵に塩を送っても、後悔はない。
 あの子が一番喜んでくれるなら。……もう一度、幸せそうに笑ってくれるなら。


『やっと、覚悟が決められたみたいだね』

『はい。……もっと早くに伝えればよかった。聞いてもらえばよかったです。相談すれば、よかったです』

『気付くの遅すぎだから。どれだけの時間かけるの』

『ははっ。……はい、本当にそうですね』