「……お、おーい。シント……?」
「あらら」
「し、シン兄、くるしい……」
「あーあ、朝日向さん。本当に泣かしちゃったんですねえ」
感激のあまり、抱きついたわたしをわざわざ剥がしたシントはと言うと、その後アキラくんに思い切りしがみつき、暫くの間少し……いやかなり、人格を崩壊させていた。
このままでいれば、さらに悪化してしまう。でも、できればもうちょっと一緒にいたい。
「……ずび。ちょっと顔、洗ってくる……」
そんなジレンマを抱えていた彼だったが、どうやら今後のために前者を取ることにしたらしい。
ここで解散――する前に、シントに渡さなければいけないものが。
「ずびっ。……なに?」
「何って、クリスマスプレゼントに混ぜてたでしょ。お返しします」
ドレスにヒールにネックレスにイヤリング。鞄に時計にストールにコート。それからクリスマスパーティーに撮ったであろうメッセージ動画。あと、……何故かわたしに似ているモアイ像。プレゼントをもらった中には、素敵なもの、意味不明なもの多々あったが、ただ一つ。これは意味深だった。
手の平に乗っていたのは、何かの鍵。
「……ん?」
「いや、だから鍵。合い鍵なんだろうけど、もらっても困るから」
「……俺じゃないけど」
「へ?」
絶対シントの仕業だと思ったのに。一体誰が。
いや、鍵だし、ただ単に忘れ物……とか、落とし物という可能性も高いか。しかも貴重品。ぞんざいには扱えない。
取り敢えず、シントと付き添いのアキラくんを個室に案内してくると席を外したみんなに手を振って、それはそっとしまっておいた。
「賑やかだったね」
「あ。……美味しかった?」
「うん。ありがとな」
「どういたしまして」
気を遣って席を外していた父がわたしの側に戻ってくると、何故か少しだけ、気恥ずかしい空気になった。多分、少し間が開いちゃったからだと思う。
「……お父さん、わたしね」
それをそっと吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
「わたし、……舟、好きじゃないんだ」



