すべての花へそして君へ③


 現に今も、兄は俺の前を歩いているのだから。
 だから、俺も前を向いて歩けばいい。兄の背を、追い続けていけばいい。


「俺だって完璧じゃないよ。間違うかもしれない。ううん、きっと間違う。だからその時、アキがそばにいてくれないと」

「……その時だけ?」

「あ、いじけてる」

「俺は、シン兄みたいになれない」

「ならなくていいのに。でもありがとう。大丈夫だよアキなら。寧ろ伸び代ばっかりだから俺の方が焦ってるくらい」

「……本当?」

「自信持ちなよ。俺の隣を任せられるのはお前だけだ」

「ん。精進する」


 そしていつかそれに追いついた時。共に並んで進んでいこう。
 もう二度と、道を違わぬように。


「でも葵に関して“何でもわかってます”ってドヤ顔は戴けない」

「しょうがないじゃない? わかっちゃうんだから。どれだけ付き合い長いと思ってんの」

「正直気持ち悪い」

「なんで!?」

「でも、大丈夫なのか? 劇で葵と知り合いだってこと、結構広まってる」

「それは口裏合わせてるから大丈夫」

「いつの間に……」

「つうかあだからね」

「……やっぱり気持ち悪い」

「さっきから酷いよアキ」

「葵がかわいそう……」

「マジなトーンで言わないで」


 ❀ ❀ ❀


 まあ、そんな話をしていたとは知らないので。

『信人くんと知り合いなんだってね』
『信人くんとはいつから?』
『彼が行方不明になって君もさぞ心配しただろう』
『彼は何と言っていたか? ああ、それが何も教えてくれなくてね』
『君に聞けばわかるのではないかと思った次第だよ』

 わたしの話題以外では、こんな質問攻めばかりに遭っていた。今度からつうかあは禁止にしておこう。


(……にしても)


 さて、どう切り出そうか。

 この子が何も言っていないってことは、『わたしたちの物語』はどうやらわたしが作っていいと、そういうことらしい。それに今夜のパーティーは、わたしとシントの話で持ち切りだ。その渦中にある二人がこうして話しているとなると、いやでも野次馬が騒ぎ立ててくる。


(……嫌だな)


 道明寺での生活は、確かにつらくもあったけど、それでもその中で楽しみを見つけられたのは他でもない、シントのおかげだ。こうして二人は別々になってしまったけれど、本来あるべき姿が、今のわたしたちであって……。
 ようやく本当の家族の元に帰れたのに、どうしてまわりにとやかく言われなきゃいけないの。