全面に皮肉を出しながら笑っている彼女は、がっちりと脇にイケメンを捕まえ、至極楽しそうだ。
そんな捕まえられた彼はというと非常に迷惑そうにしているが。並んだ二人を見ていると、去年のコンテストを思い出すな。
「楽しそうだな二人とも」
「そうでもないわよ。いい男除けにはなってるけど、体裁も何も考えずにさっさと会場抜け出そうとしてたんだから」
「違うし。ちょっと人に酔っただけだし」
「どうだか? 騒がしくなった原因がわかった途端そわそわし始めたくせに」
「は? 何のことだかさっぱりわかんないんだけど。そんなことよりもアキくん、これどうにかしてくんない? 父さんとはぐれたんだけど。ツバサもどっか行くし」
相変わらずの反応に、思わずふっと頬が緩む。
けれど、いつもの空気に気を抜いてはいられない。
「九条大臣もいらっしゃるんだな。道理で賑やかなわけだ」
「では後程ご挨拶に行こうか。それまでに父さんも探しておかないと」
急激に何かを変えたわけではない。少しだけ、…本当に少しだけ、外面をよくしただけだ。ここは、幼馴染みだけの場所ではないから。
静かに“次期当主候補”となった俺たちに、彼らの理解も早かった。さすがと言うべきか。
「お前らは行かないのか?」
「さすがのあたしも、あの人混みの中心に突っ込んでいく勇気は持ってないのよ」
「ごめんけどパス」
「あんたねえ、この期に及んでまだ逃げようなんて思って」
「こんなうっさい場所で感動の再会とか、こっちが勘弁して欲しいんだけど」
そんなことを言う日向に、その場の全員が思わず目を剥いた。……からの紀紗、大爆笑。
「あははは! てっきり逃げようとしていたんだとばかり!」
「うっさ」
「いいよいいよ! 感動の再会ね! あはは! 思う存分してこい! さあ行ってこい!」
「……ねえアキくん、これ酒入ってないよね?」
どう見ても、酔っ払いのおっさんにしか見えないんだけど。
紀紗が持っているグラスを指差しながら助けを求めてくる日向に、俺は小さく笑みを返しながら胸中で白旗を揚げていた。
どこにいても、誰といても、どんな時でも。そのままでいられる彼のそれは、きっと誰にもない強みだ。俺には到底真似できない。
(でも、前より少し、素直になったみたいだ)
酔っているだのいないだの、ああだこうだと楽しそうに言い合っている二人に隠れて、俺は一人小さく笑った。



