「正攻法はほんの小手調べ。事前に得た情報との相違確認をさせていただきました。直接お会いしないとわからないこともありますから」
「……ふむ。それで? わかったのかな」
「はい。その辺のしょうもない人間と大差ないなと」
「あ、あおい! 失礼だろう!」
「この世界は嘘で溢れています。人を騙し裏切り、そして自分の肥やしにする。あなたもそういう人なのかと」
「あはは。大嘘のお金を吹っ掛けたからね」
「けれどあなたは聡明な方だった。朝日向と言えど、わたしのような不明瞭な小娘などに早々信用を渡すことはしませんでした」
「…………」
「そして、やっぱりお優しい人です。それこそわたしなんかより」
「……成る程。では、朝日向くんが“止めなかったら”、今頃どうなっていたのかな」
それにはただ、にっこりと笑ってこう答えておいた。
「わたし、正攻法って苦手なんです」
――――――…………
――――……
「いやあ、長いこと付き合わせてしまってすまないね」
「滅相もないです! 数々の非礼、お詫びします」
「なんでだい? 君みたいな子がこれからもっと活躍すると思うと、私は楽しみで仕方ないよ」
「恐縮です」
「もっと君の話も聞きたいところだけど。これ以上独占していたら、周りからなんと言われるかわからないから、今夜はこの辺で。忙しくしているみたいだから、また時間のある時にでも家に遊びにおいで」と、彼は優しい笑顔と共に席を立った。
話の種が尽きない人だ。お酒が入ってたせいもあるだろうけど、とても饒舌にいろんな話を聞かせてくれた。
仕事、恋愛、そして家族。……うん。すごく勉強になった。
「どう? いい話聞けた?」
「あ、お父さん。うん、すごい素敵な経験させてもらった」
「いい人だったでしょ。そしてとんでもない商才」
「確かに抜かりなさそう。誰かさんと違って」
「誰かさんが話に夢中だった間に、もう一つデカい商談成立させてきたけど?」
「あはっ。やるじゃん父」
お得意げに鼻を高くした父に、思わず噴き出して笑ってしまった。
誰に見られているかわからないけれど。でも、つい笑ってしまうくらいにはあまりにも父が子供っぽくて可愛かったのだ。
「昔はわたしが添削してあげてたくらいなのに?」
「今はみやこにしてもらってるから大丈夫!」
「……大丈夫じゃない。ええ? まだしてもらってる立場なの。自分がしなよいい加減」
「最近あおいがくるちゃんに重なって見えて、俺はとても嬉しいよ」
こっちは怒っているというのに。社長の仮面を外した父の幸せそうな顔を見せられてしまっては、もう何も言えない。
「そういえばさ」
「ん?」
「何でさっき、あんなこと言ったの?」
「お金の話?」
「うん」
「じゃあ逆に聞くけど、あおいが小鳥遊さんにこだわった理由は?」



