何があって、彼がそう思ったのかはわからない。
けれど、それの答えはぼくでもわかる。
「アイさん、それは多分、本当にただの杞憂ですう」
「……そうだといいけど」
「いえいえ本当に。ぼくはほんの少ししか彼らのことを知りませんが、違うと思いますよ? どうしてそんな風に思っちゃったんです?」
「……少しだけ。俺に内緒で隠し事してて」
「ふむふむ」
「……家族の中で、俺だけはやっぱり違うのかなって」
「だから気を遣わせた、と。成る程成る程」
「だから俺は――」
「長いことこうして拗ねている、というわけですね」
「い、いや。拗ねているわけでは」
「拗ねているじゃないですかあ、それはもう存分に。家族の中で一人、仲間外れになったのが寂しかったんでしょう?」
「……」
「でもぼくはそんなことよりも、アイさんが今の方々たちを“家族”と仰っていたのが、本当に嬉しく思いますう」
「……カオル」
だから、そんな風に隠し事をされてしまったのが嫌だと思ったんだ。
それは、アイさんにとって、とってもいい変化だと思いますよ。
「彼らはきっと、大事な家族だからアイさんに隠し事をしてしまったのかもしれませんね。その方が答えとしてしっくりきます」
「……そうだね」
「だから、もう疑心暗鬼になる必要も、ため息吐く必要もありません。彼らがアイさんに隠し事はしたとしても、嘘を吐く必要はどこにもないんですから」
「うん。……ありがとうカオル」
彼らが、内心で何を思っているのかまではわからない。それは、たとえ家族の中でだって一緒だ。ぼくには、誰一人としてぼくのことをわかろうとしてくれる家族がいなかったんだから。
「いえいえ。アイさんのお役に立てて、ぼくはとっても幸せ者ですう」
だから、あなたに巡り会えて、ぼくは本当に幸せ者なんです。
「……よし。それじゃあ元気出してパーティーを盛り上げにでも行こうか。あんまり気は乗らないけど」
「その前に一度、あの騒ぎにお邪魔してはどうですか? ご挨拶も兼ねて」
「そうだね。あんなに囲まれては、かなたさんも大変だろうし」
「……そう、ですね」
でも、それは多分、違うかと。
(……自慢の娘と肩を並べて歩けて嬉しいと、顔が物語っていらっしゃいます)
そして彼女の未来を、あなたと同様、心から応援されているんではないかと。勿論あなたの未来も。
……ぼくはそう思いますよ、アイさん。



