「お疲れ様、葵ちゃん」
「シズルさん……」
「行っておいで。楽しんでおいで。今夜はきっと、素敵な一夜になるよ」
「ありがとう。……ありがとうっ、シズルさん」
目元に涙を溜めながら。それでも彼女は、溢さずに笑っていた。
(……妹、か……)
どうするのが正しいのか。それを知らない俺にはわからないけれど。
気付いた時には、彼女の頭に手が伸びていた。こうしてあげたいと、そう思った。
「泣き顔見せたらダメなんじゃない? 俺は勿論大歓迎だけど」
「ふふっ。泣いてないですよ」
「思う存分、吐き出しておいで。今までの分、全部……全部」
「はい。……本当に、ありがとうございました。シズルさん」
一応、ハンカチーフなるものも出してみたけど、どうやらもう必要ないみたいだ。
また君は、同じ笑顔で、笑うのかな。
「行ってらっしゃい」
「はい! 行ってきますっ!」
ほら。やっぱり。
また一輪、花が咲いた。



