すべての花へそして君へ③


「お疲れ様、葵ちゃん」

「シズルさん……」

「行っておいで。楽しんでおいで。今夜はきっと、素敵な一夜になるよ」

「ありがとう。……ありがとうっ、シズルさん」


 目元に涙を溜めながら。それでも彼女は、溢さずに笑っていた。


(……妹、か……)


 どうするのが正しいのか。それを知らない俺にはわからないけれど。
 気付いた時には、彼女の頭に手が伸びていた。こうしてあげたいと、そう思った。


「泣き顔見せたらダメなんじゃない? 俺は勿論大歓迎だけど」

「ふふっ。泣いてないですよ」

「思う存分、吐き出しておいで。今までの分、全部……全部」

「はい。……本当に、ありがとうございました。シズルさん」


 一応、ハンカチーフなるものも出してみたけど、どうやらもう必要ないみたいだ。
 また君は、同じ笑顔で、笑うのかな。


「行ってらっしゃい」

「はい! 行ってきますっ!」


 ほら。やっぱり。
 また一輪、花が咲いた。