┌                  ┐

 君もわたしも
 もう普通ではなくなってしまったんだね

 だったらもういっそ
 本当に別れた方がお互い幸せなのかな


《追伸》
 ま、それはさておき!
 グーとチョキとパー
 どれがいいか考えといてね~

└                  ┘


 嫌な予感のする意味不明な日本語に即行電話。でも、何度かけても応答なし。折り返しかけてくれもしない。
 よっぽどお忙しいんでしょうよっ。


『だからいい加減機嫌直しなよ。拗ねてスマホすら持たないって、どれだけお子様なの』

「はあ? こっちは意味不明のメールに対して何回も電話かけてるんじゃん。それを無視してるのはあっちでしょ」

『帰ってきて、連絡がいっぱい入ってても知らないよ』

「アイと話してやっぱりオレ思った。オレよりもあいつの方がいろいろ悪くない? てか絶対悪い。今度会ったら絶対土下座させて、オレの肩揉ませてやるんだから」

『はいはいわかったわかった。まあ喧嘩もほどほどにね。ちゃんと話すんだよ? 早いに超したことないんだからさ』


『それじゃあもう一人の九条くんにもよろしく』と、スマホからはすぐにプツンと切れた。せめて、集合時間くらいまでは電話していたかったのに。


「電話、終わったんじゃねーの」

「電話、終わったね」

「毎日ラブコールしてたら料金が馬鹿みたいにかかるからって、スマホ置いてきたんじゃねーの」

「ラブコールか。一回くらいされてみたいかも」

「……どうして俺に聞かせた」

「持ち主だし、話の内容くらい教えるのが筋かと思って」

「お前が筋なんか通す玉か」

「オレにだって、筋を通すときの一回や二回あるよ。……それに」


 夕空に見え始める小さな明かりをじっと見つめてから、持ち主にそっとスマホを返した。


「ツバサには、話しておきたかったんだ」


 どうして……なんて、はっきりとした理由はない。
 ツバサだってあいつの友達だし、今あいつがどうしているのか知りたいんじゃないかって思ったのも、決して間違いじゃない。


「ていうか今のでわかったの」

「わかるか。部分部分の話ばっか聞かせやがって」


 ムシャクシャしてたし、ちょっと嫌がらせしたかったってのも……まあ間違いじゃない。


「取り敢えず、あいつが変人変態に加え匂いフェチだったってことはよくわかった」

「それに加えてオレとあいつは喧嘩するほど仲が良いってこと。間違っても別れてなんかないからね」

「……別れた?」

「あ」


 でも、理由として一番近いものは。


「別れた話云々は、あとからちゃんと聞かせてもらうからな」

「だから、別れてないってば」


 多分、“兄ちゃんだから”……だろうな。