変わってしまったと怖くなった。変わってしまったら、もう元には戻れないと思っていた。
でも、変わったからって、それがすべて悪いことではないんだと。いい変化もあるんだと。今回の喧嘩では、それがよくわかったから。
『ひとつ、訊いてみてもいい?』
「ん? 一つと言わず、何でも訊いてくれたまえ!」
『それじゃあ遠慮なく訊くけど』
「どんとこいっ!」
早く、目を覚まさなきゃ。
早く、風邪を治さなきゃ。
『オレ、てっきりあおいが怒ってるものとばかり思ってたんだけど』
「ほへ?」
『だって……あれ何? グーチョキパーって』
「ああ! ははっ、あれね? あれは――……」
早く、君に会いたいよ。
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最後に聞こえたのは、ザバーンという水とぶつかり合った音だ。
ジリジリと焼けた肌に、冷たい水の中はとても心地がよかった。
知識ではちゃんと、海の水が飲めないことを知っていたのに。もっと、いろいろ策はなかったのかな、あのときの馬鹿なわたし。
最後の夢の中は、冷たい冷たい海の底。
『かわいそうな子。あなたは、愛を知らないの』
魔女と会った、はじまりの場所。
「……やっとあなたと、こうして話ができた」
『……! あなた……』
「今こうしてあなたとお話しているわたしは、あなたが悪い人じゃないってこと、よく知ってるの。話すととっても長いんだけど」
『……残念だけれど、たとえそうだとしてもあなたに今から言うことは、とても残酷なことよ』
「うん。そうかもしれないね。でもわたし馬鹿だからさ? よくわかんないんだよね」
『……あなた、名前は』
「わたしの体を乗っ取ったら、嫌でもわかるから教えてあげない」
『……そう、残念ね』
夢の中だから、窒息してしまうことはないだろうけれど。それでも、あまり長居はしない方がいいと、何故か思った。
海底の水の色が、誰かの心を映したかのように、どんどんと黒に染まっていく。
「わたしの体を使うことで、これからあなたにもたくさんつらい思いをさせてしまうの」
『それはないわ。はっきり言っておいてあげる。だってわたしは』
「あなたがもうすでに死んでいる人間でも。わたしを守ってくれた。だから、あなたが一番優しい人だって、わたしは知ってるんだ」
『……優しかったら、あなたの体なんて乗っ取ろうとは思わない』
「あなたがなんて言ったって! わたしが知ってるからいいの!」
『――!?』



