「……あ! これ、内緒ね?」

『ん? 誰に内緒にするの』

「あ、そっか。……うーんと。じゃあ、強いて言うならこれからのヒナタくんに」

『ははっ。まあ、よくわかんないけど、了解』


 可笑しそうに笑うヒナタくんの笑顔は、とても穏やかで優しかった。
 ふうとひとつ息を吐いてから、わたしに並ぶようにベッドに腰掛ける。ゆっくりと頬に触れた手は、冷たくて気持ちがよかった。


『横にならなくて大丈夫?』

「大丈夫だけど……」


 その手をそっと取って、むぎゅっと腕に抱きついた。


「今はこっちの方がいいかな」

『……なんか今日、いつもと違うね』

「そう? それはお互い様な気もするけど……でも、今はこうしてもいいかなって」

『普段はできないんだ』

「だって恥ずかしいし」

『あんたに羞恥心ってものがあったとは』

「変なことして、嫌われたら嫌だし」

『比べようもないくらい、今まで変なことをしてきたと思ってたけど』

「わたしも同じで、ちょっと素直になれないところがあるからさ」

『オレほどじゃないけどね』


 テンポのいい会話に、お互い思わず笑みがこぼれた。
 今までの空白だった時間なんて、わたしたちには関係ないように。


「ねえヒナタくん」

『なに?』

「わたしがヒナタくんを……みんなのことを助けたのは、自分の蒔いた種だったからじゃないよ。それもないわけじゃないけど」

『……うん』

「みんながわたしの大切な友達になってくれたから、みんなが大好きだから、わたしは力になろうと思ったんだよ」

『うん。よく知ってる』

「だからね? ヒナタくんももう、なってると思うんだ」

『……え?』


 だって君は、命の危険を冒してまで、わたしをあの大きな檻の中から助け出してくれた。
 わたしを苦しめていた、運命から。道から。考えから。解放してくれた。

 わたしを――……好きだと、言ってくれた。


「強さとか頭のこととかも、勿論あるんだろうと思うけど、ヒナタくんの中できちんと納得ができてるってわかったから、もう大丈夫だ」

『……あおい』

「人間日々成長していくものなのだ。うむ、わたしの中できちんとそれが納得できたからよし」

『オレは納得できないんだけど。なんでちょっと会わないうちに成長どころか小さくなってるものがあるのか……』

「――!? ちょっと、どこ見てるの! エッチ! 変態!」

『あんたには到底敵わないけどね』