フェアじゃないのは、嫌いだ。


「“ヒナタくんは知らない”と思うんだけど、わたし、本当にヒナタくんと別れることを考えた方がいいんじゃないかって、思っていたことがあって……」

『…………』

「あっ。もちろん今はそんなこと思ってないよ!?」

『いや、うん。……いい。大丈夫、続けて』


 頭を抱えながら大きなため息を吐いていたけれど、そこまで悪いことではなかったらしい。寧ろどちらかと言えば、引っ掛かっていた何かがなくなったような、難解な問題が解決したような。少し面持ちはスッキリとして見える。
 何がきっかけで何が理由かはわからなかったけれど、彼が優しい顔で促してくるので、わたしはそのまま話を続けた。


「なんでそう思ったかって言うと、ヒナタくんが変わってしまったと思ったからなんだ」

『オレが? 何か変わった?』

「言ったでしょう? わたしみたいになりたいって」

『……言ったね』


 わたしが隣にいることで、ヒナタくんに負担をかけたいわけじゃなかった。彼自身はそこまで思っていなくても、わたしの隣に立って並びたいと、わたしの役に立ちたいと、思うだけで彼の前にはかなりの壁が立ち塞がる。だってわたしは、普通の女子高生ではないのだから。
 わたしの隣に並べなくて、きっとヒナタくんは苦しくなる。そんなヒナタくんの求める姿でいようとすると、今度はわたしが駄目になる。
 だから、そんな関係だと長くは続かない。必ずどちらか、関係がつらくなってくるからだ。


「わたしがヒナタくんじゃないと駄目なのは、わたしがわたしでいられる場所が、君だから」

『オレだって、あんたの隣じゃないとオレでいられない』

「ヒナタくんの好きなところ、いっぱいあるよ。それはそれは数え切れないくらい。半分以上悪口ってツバサくんには言われたけど」

『いやいや、ツバサに何言ってんの』

「でも、やっぱり一番の理由は、ヒナタくんが絶対に二人でいることを選んでくれるから。わたしがそう信じてるんだ」

『…………』


 どんな状況になったとしても、彼ならわたしを一人にはしない。わたしも、絶対に彼を一人にはしない。
 普通ではないわたしには、これからどんなことが待ち受けているかわからない。……ま、はっきり言って、何があってもわたしがそんなもの撥ね除けてやるけどね!

 ……でももし、もしも。どうにもならない状況に陥ったら……。


『(……そういうこと)』


 だからって、わたしを一人残すことは絶対にない。わたしも、ヒナタくんを絶対に一人にはしない。