「リクさん?」
思い出に耽っていた俺をナナは真っ直ぐ見つめる。
「あ、ボ〜ッとしてました。すみません」
ナナは俺の頬に手を添える。
「えっ、ナナさん...?」
「...泣きそうです」
俺の少しの表情の変化を察したのだろう。
ナナも切ない顔をしてそう言った。
「...死んだ母親のコトを思い出してたんです。あの人もピアノが上手だったんで...」
「そうだったんですね...」
そう言ってナナは俺の顔から手を離す。
「お母さんはどんな人だったんですか?」
「...小さい時に事故で死んだのであまり覚えてないんすけど...でも優しい笑顔の人だったってコトは覚えてます」
「...リクさんスゴく優しい顔してます。リクさんをそんな顔にするお母さんは本当に優しい人だったんだなって思います」
俺は今そんな優しい顔をしているのだろうか...。
自分の顔は見えないが、ナナが言うならそうなのだろうと思った。
俺はピアノを見る。そして「弾きたい」と言えず、後悔した自分を思い出す。
「...思ったコトは伝えないと...か...」
「え?」
俺はナナを真っ直ぐ見る。
「ナナさんのピアノスゴく綺麗でした」
「わぁ!嬉しいです!ありがとうございます!」
ナナは晴れやかな笑顔になる。
俺は心を落ち着かせる為に深呼吸をする。
そして心の中で思っていたコトを伝える。
「それと...ワンピース着てたナナさん...すげぇ可愛かったです」
「...へっ!?」
漫画みたいに真っ赤な顔になるナナ。
それがおかしくて俺は笑った。
「えっ!あ、ありがとうございます!まさかそんな風に言って貰えるなんて...あの、えっと」
「じゃ、じゃあ帰りますか」
「えっ!は、はい!帰りましょう!」
俺もきっと顔が赤くなっているのだろう。
心臓の音がバクバクと鳴っているのが聞こえた。
女の人に「可愛い」って言うなんて俺はどうしてしまったんだ。
そんな風に思いながらも、自分の気持ちを伝えられたコトを誇らしく思った。
その後ナナと何の話をしたかは覚えていない。
きっとお互いに内容の分からない話をしていたのだろう。
そして夕陽が満ちる道で、俺たちは別れたのだった。
思い出に耽っていた俺をナナは真っ直ぐ見つめる。
「あ、ボ〜ッとしてました。すみません」
ナナは俺の頬に手を添える。
「えっ、ナナさん...?」
「...泣きそうです」
俺の少しの表情の変化を察したのだろう。
ナナも切ない顔をしてそう言った。
「...死んだ母親のコトを思い出してたんです。あの人もピアノが上手だったんで...」
「そうだったんですね...」
そう言ってナナは俺の顔から手を離す。
「お母さんはどんな人だったんですか?」
「...小さい時に事故で死んだのであまり覚えてないんすけど...でも優しい笑顔の人だったってコトは覚えてます」
「...リクさんスゴく優しい顔してます。リクさんをそんな顔にするお母さんは本当に優しい人だったんだなって思います」
俺は今そんな優しい顔をしているのだろうか...。
自分の顔は見えないが、ナナが言うならそうなのだろうと思った。
俺はピアノを見る。そして「弾きたい」と言えず、後悔した自分を思い出す。
「...思ったコトは伝えないと...か...」
「え?」
俺はナナを真っ直ぐ見る。
「ナナさんのピアノスゴく綺麗でした」
「わぁ!嬉しいです!ありがとうございます!」
ナナは晴れやかな笑顔になる。
俺は心を落ち着かせる為に深呼吸をする。
そして心の中で思っていたコトを伝える。
「それと...ワンピース着てたナナさん...すげぇ可愛かったです」
「...へっ!?」
漫画みたいに真っ赤な顔になるナナ。
それがおかしくて俺は笑った。
「えっ!あ、ありがとうございます!まさかそんな風に言って貰えるなんて...あの、えっと」
「じゃ、じゃあ帰りますか」
「えっ!は、はい!帰りましょう!」
俺もきっと顔が赤くなっているのだろう。
心臓の音がバクバクと鳴っているのが聞こえた。
女の人に「可愛い」って言うなんて俺はどうしてしまったんだ。
そんな風に思いながらも、自分の気持ちを伝えられたコトを誇らしく思った。
その後ナナと何の話をしたかは覚えていない。
きっとお互いに内容の分からない話をしていたのだろう。
そして夕陽が満ちる道で、俺たちは別れたのだった。



