「じゃあ俺たちも行きますか」
「はっ、はい!」
俺たちは近くにあった女性向けの服屋に入る。
ナナはニコニコしながら服を見ていく。
「いつもどんな服買うんすか?」
「えーっと、動きやすいのが多いです。やっぱりどんな時でも助けを呼ばれたら駆けつけたいので」
「ふーん」
この前助けてくれた時はキュースレーの仕事着である白衣を纏っていた。普段は好きな服を着れば良いと思うが、いつどんな時でも助けたいと思うのは彼女らしいと思った。
「まぁせっかくだし、俺からは着てみたいと思ってた服とか贈りますよ」
「着てみたい服ですか...」
そう言いながらナナはマネキンが着ているピンク色のワンピースを見つめる。その瞳には憧れの光が灯っていた。
「コレ良いっすね」
俺はナナが見ていたワンピースに触れながら言う。
「えっ!リクさんもそう思います!?」
「こういうの好きなんすか?」
「えっ、あの...まぁ、憧れは...します...」
耳まで真っ赤にしているナナを可愛いと思った。
俺はクスッと笑って近くにいた店員に話しかける。
「すみませーん。コレ試着したいんすけど」
「えぇっ!?リクさん!?」
「はーい。今ご案内しますね〜」
店員は素早く試着する用のワンピースを用意し、ナナを試着室に案内する。
「それではごゆっくりどうぞ〜」
「えっ!?えぇっ!?」
ナナは促されるまま試着室に入っていった。
外で待っている俺に店員はニコニコしながら話し掛ける。
「彼女さんですか?可愛らしいですね」
「ハハッ。そんなんじゃないですよ。でも...」
確かに可愛いですねとは言えなかった。俺の中の照れくさい気持ちが勝ってしまっていた。
俺のそんな気持ちを察したかどうかは分からないが、それ以上店員は何も言ってくるコトはなかった。
そして試着室のカーテンが開けられる。
「あ、あの...」
さっきと同じように耳まで真っ赤にしたナナが立っていた。
「どうですか...?」
細い身体を包むピンク色のワンピースはナナの可憐さを引き立たせていた。そしてスカートから伸びる脚はとても綺麗で思わず胸が高鳴る。
「わぁ〜可愛い!とてもお似合いです!」
店員が上手くナナを褒める。
俺もそんな風に言えたら良かったが、女性の褒め方を知らない俺は上手く言葉が出て来なかった。
「あ、ありがとうございます...!あの...リクさんはどうですか...?」
不安と期待の瞳で俺を見つめるナナ。俺はなんとか言葉を紡ぐ。
「...良いんじゃない...すか...」
俺の耳も赤くなってるのだろう。こんな一言を言うだけで赤くなるなんて恥ずかしい。
そんな俺の気持ちも知らず、俺の言葉を聞いたナナは太陽みたいな笑顔になる。
「ありがとうございます...!嬉しいです!じゃあこれにしようかな」
そうして俺はワンピースをナナに贈った。