とある休日、俺はショッピングモールに訪れていた。
「今日は何買うんすか?」
隣にいるアキがスマホをいじりながら俺に聞く。
「夏服だな。最近暑くなってきたから」
「確かに暑いっすもんねぇ〜。僕もついでに買おうかな」
そんなコトを話しながら歩いていると、誰かにぶつかった。
「わぁっ!すみません!」
俺に謝る高い声の女の子。その顔には見覚えがあった。
「あれ!?リクさん!?」
「ナナ...さん...」
前会った日から1週間しか経っていないのに、こんなに早く再会するとは思っていなかった。
「あれ〜?この前のキュースレーちゃんだ〜」
アキはまたニヤニヤした顔でナナを見る。
「あっあの時のマフィアさん!」
「あ〜僕名前言ってなかったっけ?アキだよ〜よろしくねぇ〜」
「アキさん!宜しくお願いします!この前は助けてくれてありがとうございました!」
「こちらこそリクを助けてくれてありがとうね」
「いえいえ、私の使命ですから」
「良い子だねぇ。ほら、リクもお礼言わないと」
「この前言ったから、もう言わなくて良いだろ」
「照れ屋だなぁ〜」
そう言いながらアキは俺の身体をつつく。
腑抜けた態度を取るアキに睨みを効かせるが、そんなコトを気にもせずアキは笑顔のままだ。
「今日はお買い物?」
「はい!服を買いに来ました!」
「えぇ〜僕達もだよ〜。あ、この前のお礼も兼ねて何か服買ってあげたら?」
「はぁ!?なんで俺が...」
「何かしてもらったら御礼しなきゃね」
「だ、大丈夫です!私大したコトしてませんから!」
ナナも申し訳なさそうにしている。
こんなマフィアと一緒に居る所を見られたくないだろうし、さっさと離れようとするが、そんな俺の気持ちを察しようともせずアキはどんどん話を進める。
「大したコトだって!それに僕用事が出来て帰らなくちゃいけないから!僕の代わりにリクの相手してあげてよ!」
そう言いながらアキはナナの肩に手を置く。
その時アキの手に持ったままのスマホから見えたのはアキの彼女からのLINEだった。
彼女に呼び出されたからさっさと俺を置いて帰ろうとしているのだろう。
このままうだうだしていても仕方ないと思い、俺は諦めるコトにした。
「はぁ〜...。まぁこの前のお礼ってコトで何か奢りますよ」
「えぇ!?そんな!大丈夫ですよ!?」
「まぁ、アキも用事できたみたいだしな。お前はさっさと帰れ」
「おっ!流石リク〜。じゃあナナさん、リクのコト宜しくね〜」
「えっ!?あっ、はい!」
「じゃあね〜」
そう言ってアキは手を振って帰っていった。