エンドロールは救いの詩を

「...彼女...なのかな...」
「追いかけるよ」
そう言ってルナちゃんは私の手を掴み、外へ走り出す。
「えぇ!?」
「まだ分かんないじゃん!確かめなきゃ!」
外へ出た先で2人が歩いているのを見つける。
寄り添って歩いている2人を見ると胸が痛んだ。
たまたま救助したマフィアさん。
怖い存在だと思っていたけれど、リクさんと話している内にそんな怖さは無くなっていた。
話しやすくて優しい人。
そう思っているだけの筈だった。
それなのに今私の中には得体の知れないモヤモヤが胸を占めていた。
「こーんにちわ」
「わぁ!」
急に肩を触れられ、振り返るとアキさんが居た。
「アキさん!こんにちわ」
「久しぶりだね〜。そっちのキュースレーちゃんは初めましてだよね?アキでーす。ヨロシク」
「え、あ、よろしくお願いします。ルナです」
「アキさんはリクさんのお友達だよ」
「そうそう友達であり、上司であり、家族って感じかな〜」
「そうなんですね...」
急に現れたアキさんに緊張気味のルナちゃん。
そんなルナちゃんに挨拶をした後、アキさんはリクさん達の方を見る。
「また可愛いコトしてる」
小さくそう呟くとアキさんはリクさん達の方へ向かう。
「え、アキさん!?」
「ナナ!私達も行くよ!」
ルナちゃんの言葉と共に、私達はアキさんに着いていく。
そしてアキさんはリクさん達に話しかける。
「リク」
「おー、きたか。ってナナさん?」
「え、あ、こんにちわ」
何故かアキさんの後ろに着いてきた私を不思議そうに見るリクさん。
私は後をつけていた罪悪感に苛まれていた。
そんな私やリクさんのコトは気にせず、アキさんはリクさんと一緒にいた女の人の方へ近づく。
「エリ」
アキさんにそう呼ばれた女の人はゆっくり振り向く。
「...アキ...」
「何してるの?」
女の人...エリさんは何も答えない。
「エリ」
もう一度アキさんが名前を呼ぶとエリさんは涙を浮かべる。
「だってアキがずっと私のコトほっとくんだもん!もうアキなんて知らない!リクと浮気してやる〜!!!」
突然大きな声でそう叫ぶエリさん。
顔を真っ赤にしているエリさんとは裏腹に、アキさんは涼しい笑顔を崩さない。
「ほら行くよ!リク!」
そう言いながらリクさんの腕に絡みつくエリさん。
「ダメでしょ?エリ」
アキさんがそう言うと、エリさんの動きが止まる。
「ほら、僕の所に戻っておいで」
エリさんはアキさんの顔を見ると、怒ったように頬を膨らませる。
「あ〜もう!」
そう言いながらエリさんはアキさんの胸に飛び込んだ。
「あんまりほっとくと本当に他の男にいっちゃうからね!?」
「でもエリは僕のコト好きでしょ?」
「ばかっ!」
「ふふっ。可愛い。そんなエリが僕も好きだよ」
「〜〜ほんっとにばかっ!」
そんな会話をしながらイチャイチャし始める2人。
蚊帳の外になってしまった私とリクさんとルナちゃんが立ち尽くす。
「えーっと...エリさんとアキさんはお付き合いしてるんですか?」
「そうっす。それで忙しいアキに構ってもらえなくて不貞腐れたエリが時々俺を遊び相手にするんすよ。でも結局アキに絆されて、こんな感じに丸く収まるって感じっすね」
「そっか...リクさんの彼女じゃなかったんだ」
「え?」
ついポロッと出てしまった本音。
私は急いで口をおさえる。
「えっ、あっ、これは、その...」
「ははっ!俺に彼女なんていませんよ」
リクさんは笑いながらそう言った。
その笑顔を見た時、一つの想いが心を巡ったのが分かった。
「あ、そうなんですね...」
私の心臓の音がうるさくなる。
「ところでなんでナナさんはここに?」
「あ、えーっと...」
「私と街を歩いてたらたまたまアキさんに会ったんです!それで流れで今ここに居るって感じです!」
焦った私にルナちゃんが助け舟を出してくれる。
「そ、そうなんです!」
「ふーん。まぁ、いいや。あいつらもそろそろ気が済んだと思うんで、俺達は帰ります。じゃあ」
「あ、はい!サヨナラ」
そう言ってリクさんとアキさんとエリさんは帰っていった。