にこっと笑うと、彼は一瞬目を見開いて、そっぽを向いてしまった。
「あ。照れてる」
「わ……、わかってるんなら、いちいち言わないでください」
「ふふっ。なんかレンくん可愛いね」
「か、可愛いと、男は言われても嬉しくありません!」
「はは。知ってるっ」
「……んん~っ!」
拗ねてしまったレンくんは、パクパクとジェラートに逃亡。こんな彼を見られるのも貴重なのに。ちょっと残念。
そんな彼を横目に、わたしも溶けそうになっていたところを掬って、ひとくち。
「……レンくんは、今どんな感じ?」
「……? オレ、ですか?」
様子を見る限り、大丈夫そうだとは思っていたけれど……あのあとのことが、気になっていた。
「桜へはまあ、理事長とかがいろいろ説明をしてくださっていたので、すんなり戻ってこられました」
「……そっか」
「家は、結局潰れました。でも、あんなことがあってせいか、初心を思い出したというか」
「え?」
「父も母も従業員も、心は折れてなんかいなかったんです。一から立て直します。月雪を」
「……レンくん」
道明寺のことがなかったにしても、もう時間の問題だったんだと。月雪の皆さんは改めて思い直したらしい。だったら、もう一度一から。やり直せばいいだけの話だと。
「そう言って、皆さんの背中を押したのはレンくんでしょう?」
「……!? え。な、なんで……」
危うく落としそうになってしまったジェラートを、彼は慌ててキャッチ。その時に指にジェラートが付いてしまったらしく、可愛くその指を舐めている。“なんでわかってしまったんだろうか”と。不思議そうな、でもどこか不安そうな。そんな表情を浮かべながら。
でも、さすがにわたし、人の心が読めるわけじゃないからね。……読みたいと、思うときはあるけど。特にぶきっちょさんに。
「誰かから聞いたわけじゃないよ? でも、きっとそうしたんだろうなって思ったの」
「……オレは」
「なに? 後悔してる?」
「してません! けれど、これで本当によかったのか、不安で」
「……それがわかるのは、未来しかないよね」
「え?」



