――カシャッという音で、ハッと我に返る。
「どっか行ってました。……すみません」
完全に語り、そして完全にあっちの世界へと旅立ってしまっていた。でも、謝るとなぜか二人は小さく苦笑い。
そして声を揃えて。「「デカすぎる!」」と。そう言われてしまった。
「だから、悩んでるんじゃないですかっ」
拗ねると、今度は二人してお腹を抱えだした。
「はは。すっげ。すっげーなアオイちゃん。やべえな。聞いたかトーマ」
「聞いた。聞いたよ楓さん。すっげ。マジすげえよ葵ちゃん」
「え」
言いながら小さく震えている彼らは、確かに笑ってはいるんだけれど、でもそれが、決してバカにしていない笑い方で。
「はあ……。あー。アオイちゃん。悪かった、笑って」
「え? い、いえ。自分でも果てのないことだとは思ってるので……」
「思ってても、言っちゃうのが葵ちゃんなんだよねー」
「……? どういうことですか?」
そう言うと、二人は目を合わせた。そして、やさしく笑った。
「すっげえいい夢だと思う。これ以上ないほどだ」
「途轍もない、果てのないことだろうけど。……なんでか葵ちゃんなら、やっちゃうんじゃないかなって、思ったんだ」
二人は頭を撫でながら、そんな言葉をくれた。
「出発はそれでいいと思うぞ。 俺も、アオイちゃんならできる気がして逆に怖え」
「何か困ったこととかあったら言ってよ。俺、絶対葵ちゃんの野望叶える手伝いしたい」
そっと顔を上げると、やっぱりやさしい顔の二人がいて。
「しちゃえばいいんじゃねえか? たくさんの人を。みんなを」
「してやったらいいよ。あの性格ひん曲がった奴を」
今度はしゃがみ込んで、自分を見上げてくる。
「アオイちゃんならできる。だから、それ目指して頑張れ」
「幸せ。……なりなよ。してあげなよ。葵ちゃんにしか、できっこないよ」
「……。ほん、とうに……?」
不安げにそう聞くと、二人がそっと片手ずつ手を取って、握ってくれる。
「やる前から諦めるな。できないって、決めつけるな」
「かえでさん……」
「したいこと、ちゃんとあるじゃん。おかしくなんかないよ。だから、それを目標に、決めていったらいいんだよ。これからをさ」
「……とーまさん」
だから、自分の思う通りにいけばいいと。そう言う彼らに、「……ありがとうございます」と。小さな声で、何度も何度も感謝した。



