すべての花へそして君へ②


 ――カシャッという音で、ハッと我に返る。


「どっか行ってました。……すみません」


 完全に語り、そして完全にあっちの世界へと旅立ってしまっていた。でも、謝るとなぜか二人は小さく苦笑い。
 そして声を揃えて。「「デカすぎる!」」と。そう言われてしまった。


「だから、悩んでるんじゃないですかっ」


 拗ねると、今度は二人してお腹を抱えだした。


「はは。すっげ。すっげーなアオイちゃん。やべえな。聞いたかトーマ」

「聞いた。聞いたよ楓さん。すっげ。マジすげえよ葵ちゃん」

「え」


 言いながら小さく震えている彼らは、確かに笑ってはいるんだけれど、でもそれが、決してバカにしていない笑い方で。


「はあ……。あー。アオイちゃん。悪かった、笑って」

「え? い、いえ。自分でも果てのないことだとは思ってるので……」

「思ってても、言っちゃうのが葵ちゃんなんだよねー」

「……? どういうことですか?」


 そう言うと、二人は目を合わせた。そして、やさしく笑った。


「すっげえいい夢だと思う。これ以上ないほどだ」

「途轍もない、果てのないことだろうけど。……なんでか葵ちゃんなら、やっちゃうんじゃないかなって、思ったんだ」


 二人は頭を撫でながら、そんな言葉をくれた。


「出発はそれでいいと思うぞ。 俺も、アオイちゃんならできる気がして逆に怖え」

「何か困ったこととかあったら言ってよ。俺、絶対葵ちゃんの野望叶える手伝いしたい」


 そっと顔を上げると、やっぱりやさしい顔の二人がいて。


「しちゃえばいいんじゃねえか? たくさんの人を。みんなを」

「してやったらいいよ。あの性格ひん曲がった奴を」


 今度はしゃがみ込んで、自分を見上げてくる。


「アオイちゃんならできる。だから、それ目指して頑張れ」

「幸せ。……なりなよ。してあげなよ。葵ちゃんにしか、できっこないよ」

「……。ほん、とうに……?」


 不安げにそう聞くと、二人がそっと片手ずつ手を取って、握ってくれる。


「やる前から諦めるな。できないって、決めつけるな」

「かえでさん……」

「したいこと、ちゃんとあるじゃん。おかしくなんかないよ。だから、それを目標に、決めていったらいいんだよ。これからをさ」

「……とーまさん」


 だから、自分の思う通りにいけばいいと。そう言う彼らに、「……ありがとうございます」と。小さな声で、何度も何度も感謝した。