――――――…………
――――……
……あ。またカナデくんがユズちゃんにせびられている。手持ちの財布を覗いて……手でバッテンを作ってる。あれはお昼で相当なくなったと見た。
そんな様子を横目で見つつ、今はシントと一緒に金魚すくいの屋台の前へ。すくわないけど。「出目金がいる!」と、ただシントが見てはしゃいでいる。
「シントってお祭りとか来たことないの?」
「え? ……まあそうだね。皇にいた頃は遊びに行くなんて以ての外だったし、道明寺にいた頃も出られるわけなかったし。でも、秋蘭や父さん、楓といるときはもちろん楽しかったし、それこそ葵といると飽きなかったし。遊ばなくったって、それだけで俺は十分だったよ」
(……そっか)
そんな、何の飾りもない言葉に、泣きそうなくらい嬉しくなる。
わたしも、君と出会えて本当によかったよ。毎日本当に飽きなかったしね。
「皇は? 戻ったらやっぱり大変?」
「葵がいなかったらどこでも大変だよ」
「日本語おかしいよね」
「俺の元気の源ってこと。 逆に言えば、葵がいればどこでだって平気ってこと」
「それは……そうか、としか言い返せないんだけど」
「それでいいよ。それで十分。 葵がこうして今、笑っていてくれれば十分」
そんな風にまた、全く飾られていない言葉とやさしい笑顔をくれるシントに、なんて返してあげたらいいか、上手い言葉が見つからなくて。
“笑っていてくれれば”
その言葉通りに。今はそれに甘えて、そっと笑顔をつくっておいた。
「……ちょっと真面目な話してもいい?」
……もし言葉を返すなら。そんなことを考えながら、彼が奢ってくれた(※正確に言えばカエデさんだけど)かき氷に、シャクシャクとストローを刺していた。けれど、聞こえた珍しく真面目な声に、その手を止める。
「いつ葵に話が行くかもわからないから、言っておくだけ言っておこうと思うんだ」
「……ん?」
「シント、それは……」
「いいんだ楓。どうせ黙ってたって、葵はなんとなく予想付いてただろうし」
……ああ。もしかして。
「……縁談?」
「うん。まあ、そういうこと」
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……あ。またカナデくんがユズちゃんにせびられている。手持ちの財布を覗いて……手でバッテンを作ってる。あれはお昼で相当なくなったと見た。
そんな様子を横目で見つつ、今はシントと一緒に金魚すくいの屋台の前へ。すくわないけど。「出目金がいる!」と、ただシントが見てはしゃいでいる。
「シントってお祭りとか来たことないの?」
「え? ……まあそうだね。皇にいた頃は遊びに行くなんて以ての外だったし、道明寺にいた頃も出られるわけなかったし。でも、秋蘭や父さん、楓といるときはもちろん楽しかったし、それこそ葵といると飽きなかったし。遊ばなくったって、それだけで俺は十分だったよ」
(……そっか)
そんな、何の飾りもない言葉に、泣きそうなくらい嬉しくなる。
わたしも、君と出会えて本当によかったよ。毎日本当に飽きなかったしね。
「皇は? 戻ったらやっぱり大変?」
「葵がいなかったらどこでも大変だよ」
「日本語おかしいよね」
「俺の元気の源ってこと。 逆に言えば、葵がいればどこでだって平気ってこと」
「それは……そうか、としか言い返せないんだけど」
「それでいいよ。それで十分。 葵がこうして今、笑っていてくれれば十分」
そんな風にまた、全く飾られていない言葉とやさしい笑顔をくれるシントに、なんて返してあげたらいいか、上手い言葉が見つからなくて。
“笑っていてくれれば”
その言葉通りに。今はそれに甘えて、そっと笑顔をつくっておいた。
「……ちょっと真面目な話してもいい?」
……もし言葉を返すなら。そんなことを考えながら、彼が奢ってくれた(※正確に言えばカエデさんだけど)かき氷に、シャクシャクとストローを刺していた。けれど、聞こえた珍しく真面目な声に、その手を止める。
「いつ葵に話が行くかもわからないから、言っておくだけ言っておこうと思うんだ」
「……ん?」
「シント、それは……」
「いいんだ楓。どうせ黙ってたって、葵はなんとなく予想付いてただろうし」
……ああ。もしかして。
「……縁談?」
「うん。まあ、そういうこと」



