……あの、知ってます? 彼ってー、あんなに可愛く笑ってましたけどー。ご主人様なんですよー。悪魔さんなんですよねー。


(……ヤバい。過去最高難易度である……っ)


 お祭りへと来たわたし。というか半ば強制でしたが。いつの間にか到着していましたが。今のわたしは、それどころではありませんでした。……なぜならば。


《可愛いこと言ったお仕置きね
 今日も明日も夜中に抜け出すこと

 逃げられると思ってる? 
 もし抜け出せないようなら
 本当に寝込み襲いに行くから

 どっちがいいかな、あおいちゃん
 キサとユズが寝てる横で
 必死に声を押し殺すのか

 それとも抜け出して、
 ピ――――されるのがいいのか
 オレ的にはどっちでもいいよ?

 それじゃあごゆっくり。
 あとで話、楽しみにしてるね》


(い、一体何をされるんだ。どっちもヤバいんじゃないのか……?)


 彼が最近素直になっていたからと、すっかり油断して“悪魔的部分”を忘れていた。
 内容をもう一度よくよく確認したあと、スマホをそーっとポケットに入れ、何事もなかったように……したかったけれど、そんなことはまずできなかったので、その流れで頭を抱えた。


(そうだよね~……。あの笑顔に裏があるなんてこと、最近すっかり毒気抜けちゃってたから忘れてたよー……)


 今度から疑うことにしよう。彼の笑顔は素直に受け入れない。


(……ってできないから! できてたら今すでに苦労してないし! あんなピュア、疑えるわけがないから。疑ったらそれこそ自分の心が汚れてるからー……っ!)


 とか言いつつ、今回はまんまとその裏をかかれて、高難度の選択肢を迫られているわけですが。


(相談……。で、できるわけない! ものすっごい嬉しそうに笑いながら部屋を叩き出されるに決まってる……っ)


 自分には味方がいないことが判明。しかも、選択肢は二つあるようで二つない。端から一つしかないんだよね。
 わかっててやってんだろうな~。楽しんでやがるんだろうなーこの人。