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「……送信、っと。よし。これでいいでしょう」


 あれだけうるさかった大部屋は、彼女がいなくなるとすっかり静かになってしまった。そして、何かを誰かに送ったらしい日向は、なんだか楽しそうに笑っている。


「……ねえ日向。あんた、ほんとによかったの?」

「え? 何が? ていうかキサとキクはいいの?」


 柚子は圭撫が、楓さんは信人さんが出ていったので、美作家も仲良くお祭りへ。あたしたちは……まあ、明日行くわ。あんたの代わりにみんなが変なことしないか見張っててあげる。


「それにしても……まあ、丸くなっちゃって」

「え?」


 あれだけさっきは、こっち側にすごい睨み効かせてたくせに。腕の中の女の子を、必死に守ってたくせに。余裕ですなあ。


「……いや、実際は余裕じゃないよ」

「え? そうなの?」


 そして彼は、他の人たちに聞こえないように、小さくこぼす。「オレだって、まわれるもんならまわりたいし」と。


「けど、みんなといる時の楽しそうなあいつも見てたい。みんなの話をするあいつ、すごい楽しそうだから」


 ……そっか。まあ、あんたの隣にいる時が一番楽しそうだし幸せそうな顔してるからね? その辺はちゃんとわかってるんだろうけど。


「あいつもだけど、みんなも……ね。楽しそうなのを見てたいんだ。見てたいんだよ、ずっと」

「……? ひなた……?」


 どうしたのかと。俯く彼を覗き込んでみるけど、ただ小さく笑い返されただけ。


「は~い。それじゃあ今から上映会を始めたいと思いまーす。さっきまでの皆さんのアホな映像と、あいつの瞬殺過ぎる技の数々見たい人~」


 けど、そう声を上げた時も、始まった上映会中も、終始楽しそうに笑ってはいた。……考えすぎ、かな。