ひょ~いっ!


「ぅえっ?」

「え?」


 いきなり抱え上げられた葵と、撮影中だった日向は、同時に疑問符付きで声を上げた。


「残念ですが! 俺らが勝負をしていたのは、確かに“お祭りに行くのかどうなのか”ってことなんだけど!」


 と、信人は葵の腰を両手で掴み上げ。


「それは、今日か明日かの問題であってー」


 と、圭撫が葵の足の方を持ち上げ。


「あおいちゃんの予定は埋まってまーす。残念でしたー」


 と、杜真が葵の腕を固定しながら持ち上げて。


「あーちゃんは明日も“おれら”と行くんだよ~」

「“オレら”というのはオレたちじゃなく、今日負けたメンバーの方のことで、“九条ではない”という意味だ。ざまあみろ」


 と言いながら、桜李と蓮は、ぴっ! ピッ! と笛を鳴らしながら、どこかで見たアニメのエンディングのように、彼らを先導していた。


「え? ええ!? ちょ、降ろしてー!! ひなたくーん! へるーぷっ!」


 そんな状況になっている葵は、抱えられながら彼に助けを求めるも。


「ぶはっ! なにそれっ……。くくくっ……」


 “撮っちゃるんだぞ”精神からか、カメラをバッチリと葵の方へと向けている日向は爆笑していた。


「やっば。みんな、結局明日もあいつとまわれるのにあんなバカなことしてたんだね。アホだね。バカだね。ちょーウケる」

「笑ってる場合じゃないよ!? あなたとまわれなくなっちゃうよ!?」

「え? 別にオレまわりたいって言ってないし。あんたが言ったんだし。さっきのだけでオレ、結構お腹いっぱいだし」

「え? い、意味がわからないぞ!? 確かにご飯はおいしかったけれども……そ、それでいいのかちみはっ!!」

「いいよー。ちみちみ」

「わたしがよくないよーっ!!」


 今まさに大部屋から連れ出されようとしていたところで、葵は柱にしがみつく。彼に手を伸ばしながら、必死に訴えかけるも……。


「まあ、楽しんでおいでよ。あとでいろいろ話、聞かせて?」


 とっても純粋で、爽やかで、でも可愛くて子どもっぽい。そんな彼の貴重な笑顔に、――トスッと。容赦なくハートの矢が葵の胸を攻撃。


「……い。行ってきまーす……」

「はーい。いってらっしゃ~い」


 とどめの一発にやさしい笑顔で手を振られ、大ダメージを食らった葵は、瀕死の状態に。そうして結局、“アホな戦いの勝者たち”に、お祭りへと連れて行かれちゃったとさ。


<最強ボス葵の弱点の巻>