<飛びかかった人々の末路は……>


 ポイ! ポイ! ポ~イッ!

 葵に敵うのはある意味日向しかいませんので、いくら大人数で襲いかかってこられようとも敵なしなのは周知のこと。


「さあ! かかってきなさい! 食後の運動に、わたしが相手をしてあげよう!」


 その葵の言葉にみんなが揃いも揃ってものすごい勢いで首を横に振るのももちろん周知のこと。頭がもげていきそうだ。


「えー。それはちょっとつまんな~い。物足りな~いっ」

「いやいや、みんなのあの震え尋常じゃないから。そしてぶっ飛ばしすぎだから。容赦ないね」

「ありがとー!」

「……オレ今、お礼言われるようなこと一言も言ってない気がするんだけど……」


 その投げるスピードが尋常じゃなかったので、みんな気付いたときには痛みもなく壁へ天井へと投げつけられていた。


「……今日イチの絵が撮れたっ」


 ちょっとほくほく。嬉しそうなのは彼だけである。


「えー。でも、結局どうするの? わたしは今日お祭り誰と行けばいいの?」


 葵がそう思うのも仕方がないだろう。なぜなら勝者たちは、それ以降勝者同士で戦うことなどしなかったのだから。よって、葵が“予選会”だと思うのも仕方がなかっただろう。みんながそこまでの勇者なのかどうかはさておき。
 葵がそう言うと、勝者たちはお互いを見合っていた。その目は、とても真剣そのもので……。そして話がまとまったのか。お互いを見ているだけで意見交換ができるのはさすがとしか言いようがないが、ゆっくりと勝者たちは立ち上がる。

 異様な雰囲気に、鋭い瞳。今までにないみんなの異様な状況に、上手く唾が飲み込めず、ごきゅりと葵の喉から変な音が鳴る。
 そして彼らは、ゆらりとこちらへと近付いてくる。葵は、それを逃げもせず、ただ真っ直ぐに立ち向かう。『来るなら来い』と。それがたとえ、勝ち組全員でかかってこようとも。そう意思を込め、彼らに負けず、睨み返す。

 そしてついに。彼らはついに、最終ボス葵の目の前へ。
 何も仕掛けてくる気配はない。いや、もしかしたら隙を突くつもりかも知れない。だって彼らの目は、今まで見たことがないくらい真剣で、少しだけ、背中を冷や汗が伝ってしまうくらい、葵でさえも若干逃げ腰になりそうなのだから。


「……そもそもだけど、ただ祭り行きたいだけなのに、何してるんだろうね、みんな。バカだよね~。そこがみんなのいいところだけど」


 とかまあ、そんな風景を撮影中の彼だけは余裕をぶっこいていますけどね。そんな余裕こそぶっ飛びますよ。