(あれ? すごい静か……)


 そう思っていたけれど、聞こえてくるのは彼の小さな息づかいと、心地好い心臓の音。あったかくて居心地がよくて。……ちょっとだけ、彼の方へ身を寄せる。
 でも、なんで静かなのかなーって思って、ちらり。体をずらして、みんなの方を向いてみたら。……な、なんか知らないけど、撃沈してました。


「……な、なにがあったんだYO?!」

「あんたのせい」

「え? え?? わ、わたしまだみんなと対決してないYO?!」

「いちいちウザい」

「え……。ご、ごめんなさい」


 と、取り敢えず、実況をお願いします。


「え? ……えーっと、勝負してた人たちはこっちを睨み返してきてます」

「え……。ぜ、全然大丈夫じゃない……」

「傍観者たちは、オレらのことを生温かい目で見てます」

「う、嬉しくないっ……! は、離れよ? は、離れた方がいいYOooo……」

「それお気に入りだね」

「そうだけどね……?! 否定はしないけども。でも、ひなたくんが……」

「オレの心配? まあ、今こんな会話をしてはいますが、現在進行形で睨みを利かせて予防線を張っている最中ですけどね」

「一刻も早く離れた方がいいんじゃないのかな……っ?!」

「あー。なんかみんなものすごい勢いで飛びかかってきそう」

「離れYO!? 離れた方GA!! 今何よりも優先なのは、命DAYO……!?」


 本気90%おふざけ10%の必死の訴え。けれどその甲斐も虚しく、なぜか少し強まる腕の力。そして、「……違う」と拗ねた声。


「……え? な、何が違う……?」

「優先事項」

「え? え……??」


 また腕の力が強まり、ピタリと体同士がくっつく。息を吸った彼の心臓が、……大きく音を立てた。


「今日は、無理そうだから。……明日とかで、いいんじゃん?」


 また、大きく音を立てる。今度は、彼だけじゃない。


「……だから、行っておいで? 楽しんでおいで? それで、明日はそこにオレのこと連れてってね」


 そんな彼からの誘いについつい嬉しくなって。


「うん! 嬉しいっ! ありがとー……!!」


 むぎゅーっと抱きつきながら、ついつい声まで大きくなってしまったので。さすがに限界だったみんながプッツンして、こちらへと襲いかかってきてしまいました。