すべての花へそして君へ②


 それから、コズエ先生とカオルくん、レンくんのこと。
 先生はさっきも少しだけ名前を出したけど。今回の事件をきっかけに、いきなりではあったけど桜を辞めた。先生が仮の姿だったのだから当たり前なんだけど、それはそれで、やっぱり寂しかったりする。けど、呼び出す時はいつも担当してくれるし、元気な姿が見られるのはとっても嬉しい。

 次はカオルくん。


『あおいさん、これ。見て見て』


 日下部の問題があったにもかかわらず、とってものびのびとしているんだとか。一人暮らしを始めたらしいけれど、今でも時々コズエ先生の家に転がり込んだりしてるみたい。
 アイくんに《ちゃんと首輪を着けとけ!》なんてメールはしょっちゅう。登校中の電車の中で何度か見せてもらったそれに、二人してよく笑い合った。

 そしてレンくん。
 彼からはあまり、お家のことは聞かないからどうなっているのかはわからないけれど、今まで離れていたご家族の方とは、一緒に暮らしてるみたい。なんだかんだで笑顔も増えてるような気がするから、きっといろんな話をご家族としてるんじゃないかな? って、勝手に想像してるけど。


「あぁあぁ~。そうだよね。そういえば昨日は金曜日だった」


 その可能性があったのをすっかり忘れていたよと、アイくんは両膝に肘をついて頭を抱えている。


「オレに勝とうなんて百年早いよ」

「俺に柔道で勝とうなんて一万年早いけどね」

「はあ? そんなことないし。本気出せばちょちょいと投げ飛ばしてあげるよ」

「何言ってんのさ九条くん。そんなヒョロヒョロな体して、俺に勝てるだなんて本気で思ってるの? ちゃんと自分の力量をわかってないと、いつか怪我するよ」

「知らないんだアイ。能ある鷹は爪を隠すって言うじゃん。実はこの服の下には、バッキバキに割れたオレの腹筋が――」

「静かにしなさい」

「「……ハイ」」


 そして最後の決め事。それは、さっきアイくんが言っていた金曜日の夜。


(昨日も、お父さんとお母さん、ご飯食べたあとぐっすり寝ちゃってたな)


『週に一回はみんなで一緒にご飯が食べたい!』という我が儘だ。すぐに頷いてくれた家族たちと相談し、学校や仕事のことも考えた結果、決行は金曜日に。
 この日は朝日向が花咲へとやってきて、たくさんの料理をみんなで囲む。次の日仕事はお休みだから、羽目を外して飲んではしゃいでお泊まりをする、とっても賑やかな夜だ。