すべての花へそして君へ②


「「じゃんけんぽん!!」」


 ……じ、実況のヒナタさーん。お願いしまーす……。


「え? ……あ、はい。 彼らの対決ははじめからジャンケンです」

「どういうことですかっ!? 柔道じゃなかったんですか!? そのつもりで解説してましたよわたし!!」

「そうですかー。なんか話が噛み合わないと思ったんですよねー」

「はじめからわかってたんですねっ!?」

「え? ええ。そうですね。 だから一番いい絵が撮れると言ったんです。アホな感じの」

「おかしいっ。ジャンケンなんか部屋の隅っこでそれこそできますよねっ? なんで大部屋のど真ん中であんなことしてるんですかっ」

「え? あなたとお祭り行きたいからですよ?」

「そうでしょうけどねっ!?」


 そんな会話をしている最中も、部屋のど真ん中でジャンケン対決をしている二人の間では、ずっとあいこが続いている。


「実況のひなたです。そんなアホな対決を、まわりのみんなが固唾を呑んで見守る様子が一番アホだなと思います」


 それ、実況じゃなくて感想だと思います。


「いやあ、それにしても、あの二人は息がピッタリすぎてある意味あおいさんの予想は当たってましたね。一向に勝負が決まりません」

「そんな予想は全然していなかったんですけどね? けれどヒナタさん! ジャンケンは正当な勝負方法の一つです! 侮ってはいけません!」

「別に侮ってません。ただアホだと思っただけです」

「そ、そうですか……」


 そんなことを話している間も、二人のジャンケンに決着がつく様子は見られない。


「……うむ。未だにあいこが続いている模様です。これはどうしてでしょう。解説のっ、あおいさーんっ!」

「え。いやいや、めっちゃ近くにいるんで、声張らなくても……」

「それでー、どうしてだと思うんですかー」

「え……。なんでちょっと投げやり……? 面倒臭そうなんですが……」

「だってこんな絵撮っても面白かったのはじめだけじゃん。これなら編集して何回もループさせれば済むことだし」

「ええー……。えーっと。二人は小さい頃から仲が良く、一緒に稽古をしてきた仲なので、息もピッタリなのではないかと。 ほら、よく言うじゃないですか。双子はあいこの確率が高いとかなんとか」

「そうこう言ってる間に勝負がついたようです!」

「……話聞く気ないですよね、あなた」


 一生懸命解説っぽいことをしようと頑張っていたけれど。どうやら、あの長いジャンケン対決に幕が下りたようだ。


「くそっ……。オウリがマミリンの最新コスチュームフィギュアを持ってるなんてっ、卑怯だっ」


 ……ん?? あのー、すみませんヒナタさん。わたし頑張って解説しようとしてたのでちょっとわからないんですけど、どうしてアカネくんが泣きながらフィギュアを大事そうに抱えているのか教えてくれませんかね?


「はい。こちら実況のひなたです。一向に勝負がつかなかったため、オウリが魔法少女で勝ちを譲ってもらいました。以上です」

「もはやジャンケン関係ない……」


 膝から崩れ落ち、悔しそうなアカネくん。まあ、喜びを隠し切れないのか、口角は若干上がってるけど。それに対しオウリくんはというと。


「ふっ……。切り札を取ってて正解だったよ」


 超ドヤ顔の勝ち誇った顔で仁王立ちしていらっしゃいます。


「ねえヒナタさん。あれってオウリくんですよね。なんか黒いんですけど……」

「間違いなくオウリですね。もはや勝ちなら何でもいいって感じですね」

「正当じゃ無くなっちゃったよ……」