「二人でラブラブしないでくださいよ! あおいさん。俺ともラブラブしましょ?」
「え」
「ちょっとアイ。席外して」
「なんで邪魔者扱いするの!? そもそも九条くん付きって聞いてなかったんだけど!! てっきり二人っきりだと思ったのにっ!」
「えーっと……」
「はあ? オレだってアイがいるなんて聞いてないし」
「嘘に無理があるでしょ! 昨日泊まってったじゃんっ!」
「ちょ、ちょっと落ち着こうか……?」
「あれ。アイいたんだ。てっきり出ていったのかと」
「静かにしなさい」
「「……はい」」
彼――アイくんと毎日一緒に登校してるから、長い道のりだって苦ではない。帰りも、時間が合いそうなら一緒に帰ってるし。
(……けどこれは、決め事じゃなくて提案)
彼の父――アザミさんの判決については未だに見送られており、その結果がどうなるかはわからないけれど。それでも、一緒に待っていたいんだ。わたしにとっても、父親であったことに変わりはないから。
『あおいさんの提案は、すごくすごく嬉しいよ……?』
だけど――と。血の繋がりのない、全くの無関係な自分が他人の家でお世話になるなど簡単に許すことはできなかったんだろう。
『あおいの家族なら、自分たちにとっても君はもう家族同然だ』
けれど、花咲のお二人が彼にこう言ったんだ。それに、全く面識がないわけじゃない。お二人は昔からアザミさんのことはご存じだったし、その彼が帰ってこられるなら一緒に待っていたいと。
アイくんは少し困ったような顔をしていたけれど、そこはわたしたちの粘り勝ちといったところだ。
「あおいさんあおいさんっ。ミズカさんとヒイノさんにはお土産何を買って帰りますか?」
「うーん。何がいいと思う?」
「ナマコでいいんじゃない」
「そうだ! そうしましょうあおいさんっ」
「ミズカさんには嫌みでしかないけどね……」
アイくんはすぐに花咲に溶け込み、毎日楽しそうで笑顔もいっぱい。見てるわたしも、ついつられて笑顔になって。お二人のおかげもあってか、花咲家では常に笑顔が絶えない。



