「……ん? カチ?」
わしゃわしゃわしゃわしゃ……。
「えっ。 ちょ、あおい」
「早く行ってきなさい」
「……やだ。ちゅーさせてくれたら行く」
「チッ」
「……え。え? あ、あおい。今舌打ちした?」
「さっさと行ってきなさい」
「え。ね、ねえ。今舌打ち」
「さっさと行ってきなさい」
「……したの。舌打」
「……チッ」
「した! やっぱりした!」
――グイッ。
「えっ!? ちょ、ちょっと降ろし」
「うるさい」
「えー……。ちょ、あおいさん」
「暴れんな」
ガラガラッ。
シャア――――……。
「……担ぐなって言ったのに。男のプライドずたずたなんだけど」
「あっそ」
「っ、ていうか! さっさと降ろし……あ。どうも」
「しっかりあったまってくること。いい」
「………………」
「………………」
「ちゅーさせてくれたら行ってあげても……って!! ちょっと!? 何やってんの!?」
「さっさと行かないから脱がすの手伝ってあげてんの」
「はあ!? い、いいから! それはさすがにまだ早い!!」
「はあ? 何言ってんの」
「え……。あ、あおいだよね? お願い。あおいって言って……」
「ほら。さっさと脱いで行ってきなさい。手伝ってあげるから」
「おかしい! あおいがおかしいっ!! さっき変なスイッチ入ったから絶対そのせいっ! 絶対変態スイッチ入ったって……!!」
「さっさと脱げって言ってんでしょ」
「待って待って待って! さすがに待って。そこまでのまだ心の準備できてないっ!」
「は? 意味わかんないこと言ってないで、早く脱げっつってん……のっ!!」
ガチャガチャ。
シャア――――……。
ボコッ!
ぼこっ!
ベキッ!!
ガンッ!!
――――――…………
――――……
「そろそろ上がったかな~? ……って。え? あ、アオイちゃん……?」
サラはシャワー室の前で葵を発見した▼
「……そもそも、体あっためるために皆さんよりも先に借りたんだから、早く行って早く帰ってこなきゃいけなかったのに……。……なのに、わかってるくせに何であんな意地悪するの。何でわざわざ恥ずかしいこと口にしないといけないの。一種のいじめじゃないか……。ぶつぶつぶつ。……心を鬼に心を鬼に心を鬼に心を鬼に……ぶつぶつぶつ……」
変態葵は、何かを唱えていた▼
「……アオイちゃん? こんなところに座ってると、お尻冷えちゃうわよ?」
「――!! だ、断じてお尻は見てませんっ!!!!」
「え? ……ふふっ。取り敢えず胸元がセクシーだから、ほかの男の子たちに見せる前に直そっか?」
「……!?!?」
サラはだいたい察した▼
――勝者、わずかな誤差で葵。



