彼は、動揺を隠し切れていないようだった。
それもそのはずだ。だって、“何も知らないはず”のわたしは、この半年間普通の女子高生みたいに楽しい日々を過ごしていたのだから。
にっこりと、効果音までつきそうなほどの笑顔を浮かべるわたしとは裏腹に、彼の顔色は、時間が経つほどおかしくなっていく。
考えたくなくても、すべての言葉の鍵が、ひとつ……またひとつと、勝手に答えまでの扉を開けていくからだ。扉の向こうが、酷く恐ろしいからだ。
「な……んで……」
「わからないと思ったでしょ」
「なんで……」
「気付いてないと思ってたでしょ」
「あお、い」
「だから、“まだ気付いていない”んでしょう?」
「……は? 何、を」
そこで、彼は言葉を切った。
そして、掴み掛かるように肩へと手を伸ばしてくる。
「っ、あおい……!」
彼の中で、一番奥の扉が開く音がする。
「……いつ、から。……いや」
――――頼むから。
「何を。……どこまで知って」
――――お願いだから。
「どっちを、……選んだっていうんだよ……っ!」
――――嘘だと言ってくれ。
本当に聞こえたのは、口から出た言葉か、心の声か。



