「理由はいくつかある。でも一番は、オレのせいであおいに負担をかけたくなかったから」
「どうして、わたしにとってヒナタくんが負担だなんて思うの」
「オレが、弱いから」
「それは、前からわかってたことじゃないの?」
「……たとえばさ、オレの身に何かがあるってわかったら、あおいは迷わずオレを助けに来るでしょ」
「それは、当たり前だよ」
「二つに一つを選ばないといけなくなったとき、片方がオレなら、何が何でもあおいはオレを絶対に選ぶでしょ」
「……それじゃあ、ダメなの?」
「そうやって、オレは何度も目の前であおいを死なせたよ」
「夢で、でしょう……?」
「だからって、絶対にないなんて言い切れる? オレは、可能性はゼロじゃないって、絶対に言い切れるよ」
「ヒナタくん……」
悲しそうに、彼は短く吐き捨てた。……それ以上、口を挟むことは躊躇われた。
「オレは、オレが嫌になるほどあおいと釣り合うような人間じゃないのが嫌なんだ」
「…………」
「今日だって、嫌ってほど思い知らされた」
「……タカトのこと?」
「オレなんかが隣にいたら、やっぱりあおいの足を引っ張るだけだった。オレは、堂々とあおいの隣に並べるような奴じゃない」
「…………」
何も言わず待ってみたけれど、彼はそれ以降口を閉ざしたままだった。
どうやら、【だから別れたい】らしい。
まだ他にも、言ってないような気がしなくもないけど、それは言わないままなのかな。気付いてないと思ってるのかな。
「……強く、なりたいって」
「え?」
「さっき、そう言ってたよね。どんな風に?」
「……どんな風……」
考えたことはなかったのか、それとも漠然としすぎているのか。
顎に手を当てて一頻り悩んだ彼は、ゆっくりと頭をもたげて大きな窓ガラスの向こう側に広がる夜空を見上げた。わたしも、それに倣ってみた。
「あおい、みたいになりたい……かな」
今夜はきっと、綺麗な星空……なのだろう。
「そうしたらきっと、オレは自信を持って隣を歩けると思う」
でも、わたしには少し、それが滲んで見えるんだ。
「取り敢えず、当面の目標は強くなりたい。自分だけじゃなくて、大切な人を守れるくらい。それがあおいにはできるから、正直羨ましい。ちょっとでいいから分けて欲しいくらい」
「……そっか」
「あとは、あおいみたいに早く頭を回転させて、いろんなことに対応できるようになりたい。いろんなものを、深く広く、捉えられるように……普通はなかなかできないようなことが、オレにもできるようになれたら」
「そうなれたら、ヒナタくんはわたしの役に立てるんだね」



