そこまで溜めた不安をつらさを吐いた彼は、そっと手の力を緩めてくれた。
「……痛かったね、ごめん。痕残るね、多分」
「大丈夫だよ。すぐ消えると思う」
「……なんか、それも嫌だな。何かがずっと残ってればいいのに」
「ヒナタくん……」
大事そうにわたしの手を顔の前で握って、苦しそうに顔を歪めた。
彼が今欲しいのは、確かな【大丈夫】という言葉。わかっているのに、わたしはそれを、口にすることができなかった。できる……わけがなかった。
「ヒナタくん、教えてくれて……ありがとう」
代わりに、頭を抱えるように抱きしめた。
震えた肩も、彼のつらさも不安も、一緒に……いっしょに。
「あ、お……」
「このことでしょう? わたしに、言わないといけないのにずっと言えずにいたこと」
「……うん」
「ヒナタくんのことだから、わたしのことを思って今まで言わずにいてくれたんだよね」
「ちがっ。……オレが、言うに言えなくて。それで今までずっと引き摺って……」
「ううん大丈夫。わたし、ちゃんとわかってる。全部言わなくても、ヒナタくんがわたしにしてくれたこと、絶対に間違ったりしないよ」
だから、何も知らないわたしはこの半年間、普通の女子高生みたいに、楽しい日々を過ごせたんだ。
「だから、今まで一生懸命隠していてくれてありがとう。一人で抱えさせて、ごめんね」
「……っ」
ぎゅっと力を入れて抱きしめると、ふっとわずかに体重がかかった。
今まで張り詰めていたものが、無駄に入っていた力が抜けたのだろう。
トントントンと、三回肩を叩いてあげた。
そしてそのまま肩を掴み、ぐいっと距離をとった。
「……?」
いきなりのことに、彼は一体何が起こったのかと目を瞬かせている。
「それで?」
「……え?」
「なんで別れたいのか、納得できる理由があるんだよね」
「えーっと……」
いろいろ挟んだのでお忘れでしょうが、わたしね、ものすごーくお怒りモードなんです。
はい。もうしんみりモードは終了。ここからは、泣いて許されると思ったら大間違いだからな。
「…………」
「何か言えば」
「な、なんでそこまでキレ」
「わたし、無駄な時間って嫌いなんだよね」
「……だったら、そんな食って掛からないでくれる? ちゃんと言うから」
「わかった」
彼の前に座り真っ直ぐ見据えると、少し狼狽えたように慌てて視線を逸らされた。
けれど、ちゃんと理由は教えてくれるらしい。



