すべての花へそして君へ②


 そこまで溜めた不安をつらさを吐いた彼は、そっと手の力を緩めてくれた。


「……痛かったね、ごめん。痕残るね、多分」

「大丈夫だよ。すぐ消えると思う」

「……なんか、それも嫌だな。何かがずっと残ってればいいのに」

「ヒナタくん……」


 大事そうにわたしの手を顔の前で握って、苦しそうに顔を歪めた。
 彼が今欲しいのは、確かな【大丈夫】という言葉。わかっているのに、わたしはそれを、口にすることができなかった。できる……わけがなかった。


「ヒナタくん、教えてくれて……ありがとう」


 代わりに、頭を抱えるように抱きしめた。
 震えた肩も、彼のつらさも不安も、一緒に……いっしょに。


「あ、お……」

「このことでしょう? わたしに、言わないといけないのにずっと言えずにいたこと」

「……うん」

「ヒナタくんのことだから、わたしのことを思って今まで言わずにいてくれたんだよね」

「ちがっ。……オレが、言うに言えなくて。それで今までずっと引き摺って……」

「ううん大丈夫。わたし、ちゃんとわかってる。全部言わなくても、ヒナタくんがわたしにしてくれたこと、絶対に間違ったりしないよ」


 だから、何も知らないわたしはこの半年間、普通の女子高生みたいに、楽しい日々を過ごせたんだ。


「だから、今まで一生懸命隠していてくれてありがとう。一人で抱えさせて、ごめんね」

「……っ」


 ぎゅっと力を入れて抱きしめると、ふっとわずかに体重がかかった。
 今まで張り詰めていたものが、無駄に入っていた力が抜けたのだろう。

 トントントンと、三回肩を叩いてあげた。
 そしてそのまま肩を掴み、ぐいっと距離をとった。


「……?」


 いきなりのことに、彼は一体何が起こったのかと目を瞬かせている。


「それで?」

「……え?」

「なんで別れたいのか、納得できる理由があるんだよね」

「えーっと……」


 いろいろ挟んだのでお忘れでしょうが、わたしね、ものすごーくお怒りモードなんです。
 はい。もうしんみりモードは終了。ここからは、泣いて許されると思ったら大間違いだからな。


「…………」

「何か言えば」

「な、なんでそこまでキレ」

「わたし、無駄な時間って嫌いなんだよね」

「……だったら、そんな食って掛からないでくれる? ちゃんと言うから」

「わかった」


 彼の前に座り真っ直ぐ見据えると、少し狼狽えたように慌てて視線を逸らされた。
 けれど、ちゃんと理由は教えてくれるらしい。