すべての花へそして君へ②


 確かにコズエ先生は、彼にとってはとても残酷なことを嬉しそうに報告しただろう。
 でもそれは、仕方のないことなんだ。彼女が今までどれだけの事件に関わって、そして……その末路を見てきたか。

 世界を揺るがすほどの大事件にもかかわらず、この罪で済んだことは、本当にたくさんの偶然の積み重ねでできた奇跡なのだろう。


「先生が笑って報告したことは、オレの中でも一応は理解できたし、そのことについては怒ってないよ。……腹が立ったのは、その後先生が無責任に『もう一生会えないなんてことはないんだから』って言ったからだよ」

「……どう、して……?」

「逆に訊くけど、何でわかるのそんなこと。あおいにはわかるの。何か根拠があってそう言ってるの」

「違うよ。どうしてもう、一生会えないなんてヒナタくんが思ってるのかがわからないの」

「……」

「……ねえヒナタくん、何か言って」

「先生は、そのあとちゃんと謝ってくれた。『罪が軽くなったと喜んでいた私の浅はかな考えだった』って。『あまりにも軽々しい発言だった』って。だからもう、怒ってないよ」

「違う。そうじゃないよ。わたしが今訊いてるのは――」


 そこまで言いかけたわたしの手首を、彼はただ強く、掴んだ。


「だったらあんたは、絶対大丈夫だって言い切れるの」


 まるで、怒りを必死に堪えているかのように。今にも爆発してしまいそうなそれを、抑え込んでいるかのように。


「訊いてみたよ試しに。もし二つ目の道を選んだとして、一体どんな事件に関わることになるのか。……こいつら馬鹿なのかって、本気で思ったよ? 何そんな危険なことを、高校卒業したばかりの女の子にさせようとしてるのかって。本当に狂ってんじゃないかって」

「ひなたくん……」

「頭がおかしくなりそうだった。いや、ちょっとおかしくなってたんだ。まだ、一つ目の道の方が危険がないんじゃないか、柵越しでも、会えるだけマシなんじゃないか。そんな馬鹿なこと、考えたり――……」


 ある日目が覚めたら、あおいがどこにもいなかった。
 捜してたら、いつの間にか目の前に小さな背中があった。
 気付いたら、オレの腕の中でぐったりしてた。
 真っ赤な血溜まりつくって、掠れた声でオレを呼んでた。


「そんな夢ばっか見るようになって、酷いと全然寝られなくて」

「わたしがいたら、大丈夫だった……?」

「……うん。隣にいてくれたら、ちゃんと寝られた」

「……そっか」