「選択の猶予は、あおいが高校を卒業するまで」
それは、罪を犯した彼女と同等乃至それ以上の力を持つわたしへの、上が下した【肩代わり】という決断。
「ひとつは、厳重な監視下の元で一生を過ごす未来」
つまりは、あまりにも予想できない力を危惧し、わたし自身を第一級犯罪者として扱い、独房に入れておく……ということ。
「……でも多分、あんたはこっちを選ぶんだろうね」
一度言葉を句切って、彼はつらそうにわたしから視線を逸らした。
「もうひとつは、現在の未解決事件他、世界中で起こる事件の数々へ死力を尽くすこと。世界中の人の役に立てる未来……だってさ」
逆に、わたしの計り知れない力を買ってやるから、世界中の人々のためにその力を存分に使え、ということ。
(……全く違う内容の二つには、共通点がある)
それは期限だ。彼の口からは、どちらもそれを言わなかった。
「オレは、何度も自分の耳を疑ったよ。そんなって、嘘でしょって、何回も繰り返した」
自嘲するように、彼は小さく鼻で笑う。
「……驚きすぎて、声も出ない?」
「……うん」
「だよね。わけわかんないよね。本当に」
「本当に、泣かないんだと思って」
「……え?」
一度逸らされた瞳が、驚いたように少しだけ丸くなって再び戻ってくる。
「たくさん、泣いたの……?」
「……」
「いっぱいいっぱい、泣いたんだね」
「……うん」
そしてまた、つらそうに歪んだそれは、ゆっくりと俯いていった。そんな彼が、とても痛々しかった。
「一人でずっとつらかったね。ごめんね」
「……ん」
「いっぱい泣かせて、ごめんね」
「……うん」
「わたしの分まで、たくさん泣いてくれて……ありがとう。ありがとう、ヒナタくん」
「……っ」
そっと頭を撫でると、彼の肩が小さく震えた。
けれど、彼はもう泣かなかった。必死に堪えて……堪えて。また、わたしの分まで泣いてくれた。弱り切った、その心の中で。
それが落ち着いた頃、彼は再び、その時の話をしてくれた。
「本当は、今すぐにでも……ってことだったらしい。でも、あおいの今までの過去とか事情を知って、高校卒業まで先送りにしてくれたんだって」
「……ねえ、ヒナタくん」
「……ん?」
「先生のこと、怒ってる?」
「……今は、怒ってないよ」



