すべての花へそして君へ②


 俯いた拍子に落ちていったものをぼうっと見つめていると、何かが頬に触れて、ちゅっと軽く音を立てながら離れていった。……え。


「いつから、起きて……」

「んん~~……」

「……あの。おーい、もしもし……?」


 どうやらこの人、寝ぼけながらキスしてきたらしいんだけど。
 ……何それ。可愛すぎでしょ。


「……体、つらくない?」

「んーん」

「寝ぼけてる?」

「ん」

「オレのこと、好き?」

「んっ」

「……やさしくできなかったから、嫌いになった?」

「んーん!」

「ははっ。……そっか、ありがと」


 もたれかかってくる体を引き寄せると、彼女は焦点の合わない瞳でオレの顔を見上げながら、そっと頬に手を添えてくる。


「……また……」

「ん?」

「さみしく、なった……?」

「……ん。結構」


 目元に残っていたのだろう。そこへと唇を寄せた彼女は頭に抱きつくように腕を回し、そのままオレの体ごと布団に逆戻り。


「ちょ、……起きてるんでしょ」

「寝てます」

「いやそれ起きてるでしょ」

「起きてたらいろいろ考えちゃうから」

「……え?」


 夢の世界に半分片足をつけながら、それでも彼女は頭を何度も撫でてくれる。
 ……そうされていたら、次第に睡魔が襲ってきた。


「だから、今は寝るの」

「……ん。そうだね」

「それで、朝起きたらおはようって言うの」

「はは。……うん。言おうね」

「これからずっと、……ずっと、いうんやからあー……」

「……ははっ。……そうだね」


 けれど彼女は、もうほとんど向こうの世界に旅立っていってるみたいだ。
 ……じゃあ、オレもあとを追いかけるかな。


「ずっと、言ってくれる……?」

「ん」

「ずっと、……オレのこと好きでいてくれる?」

「んっ」

「……ずっと、オレのそばにいてくれる……?」

「んー!」

「ははっ。……そっか」


 愛しい彼女にもう一度キスを落とし、首元にプレゼントをつけながら。そっと、微かに小さく耳元で囁く。
 きっと、さすがの彼女でも、今の状態で覚えてはいられないだろうから。

 だから、起きたら知らぬ顔で『おはよう』って言い合おう。……それだけで十分オレは、幸せなんだ。