俯いた拍子に落ちていったものをぼうっと見つめていると、何かが頬に触れて、ちゅっと軽く音を立てながら離れていった。……え。
「いつから、起きて……」
「んん~~……」
「……あの。おーい、もしもし……?」
どうやらこの人、寝ぼけながらキスしてきたらしいんだけど。
……何それ。可愛すぎでしょ。
「……体、つらくない?」
「んーん」
「寝ぼけてる?」
「ん」
「オレのこと、好き?」
「んっ」
「……やさしくできなかったから、嫌いになった?」
「んーん!」
「ははっ。……そっか、ありがと」
もたれかかってくる体を引き寄せると、彼女は焦点の合わない瞳でオレの顔を見上げながら、そっと頬に手を添えてくる。
「……また……」
「ん?」
「さみしく、なった……?」
「……ん。結構」
目元に残っていたのだろう。そこへと唇を寄せた彼女は頭に抱きつくように腕を回し、そのままオレの体ごと布団に逆戻り。
「ちょ、……起きてるんでしょ」
「寝てます」
「いやそれ起きてるでしょ」
「起きてたらいろいろ考えちゃうから」
「……え?」
夢の世界に半分片足をつけながら、それでも彼女は頭を何度も撫でてくれる。
……そうされていたら、次第に睡魔が襲ってきた。
「だから、今は寝るの」
「……ん。そうだね」
「それで、朝起きたらおはようって言うの」
「はは。……うん。言おうね」
「これからずっと、……ずっと、いうんやからあー……」
「……ははっ。……そうだね」
けれど彼女は、もうほとんど向こうの世界に旅立っていってるみたいだ。
……じゃあ、オレもあとを追いかけるかな。
「ずっと、言ってくれる……?」
「ん」
「ずっと、……オレのこと好きでいてくれる?」
「んっ」
「……ずっと、オレのそばにいてくれる……?」
「んー!」
「ははっ。……そっか」
愛しい彼女にもう一度キスを落とし、首元にプレゼントをつけながら。そっと、微かに小さく耳元で囁く。
きっと、さすがの彼女でも、今の状態で覚えてはいられないだろうから。
だから、起きたら知らぬ顔で『おはよう』って言い合おう。……それだけで十分オレは、幸せなんだ。



