「……オレは、あおいが可愛すぎて死ぬかと思ったよ」
彼女が移動してくれた家具その他の間を縫って寝室へと戻ると、愛しい彼女はあどけない寝顔でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
……誰、こいつここに置いていった人誰。寝顔撮っていいかな。
「んん……。ひにゃらくん……」
「…………」
お願いあおい、もっかい言って。レコーダー準備したからっ。
そんなストーカー染みた……というか抜けきっていないストーカー癖にため息を落としつつ、顔にかかる彼女の髪を撫でるように払う。
「……あんまり、やさしくできなくてごめんね」
有言実行。なんとかだけど。
けれど、ああでも言っておかないと、ああでもしておかないと、多分オレの理性は最後まで保ってはくれなかっただろう。
「だいぶ伸びたね……」
幸せそうな顔で眠る彼女の頭を撫でていると、よみがえってくる思い出。つらく、苦しい過去。
そういえばこの髪も、契約で伸ばしていたっけか。やさし過ぎる彼女は、はじめての友人を助けるために、お構いなくその髪を切り落としていたけれど。
「……全く。どれだけかっこいいんだか」
昔はただ、今オレの横に眠っている彼女を助けるのに必死だった。
こんな関係になれるなんて、……なろうなんてことすら思っていなかったけれど。
どこかで誰かが、見ていてくれたのだろうか。
もう、いいんだよって。幸せを望んでもいいんだよって。
……一瞬でもいいから、幸せになっていいんだよって。そう、言ってくれているのだろうか。
「好きな人に好きだなんて言ってもらえる奇跡以上に、幸せなことなんてないよね」
だから今、オレは本当に幸せだ。
これ以上の幸せなんかもらったら、罰が当たるに決まってる。
……それがたとえ、ほんのひとときの幸せだとしても。
「……はは。あーあ……」
拍車がかかってしまった、彼女への異常なまでの愛おしさ。止めどなく溢れてくる“好き”は、いつか少しでも落ち着いてくれる日が来るんだろうか。
……来てもらわないと、本当に困るのだけれど。



